今日は、深夜の韓国のニュースで寝不足気味です。戒厳令発動と軍の投入の映像を見て一瞬クーデターかと思いました。ところが、仮に報道通りなら、戒厳令はほぼ大統領の独断で行われた模様で、改めて、大統領の権限の強さと、これに伴う制度の不安定さに愕然としました。未明には戒厳令は解除されましたが、大統領の辞任または弾劾に繋がる可能性もあり予断は許されません。

興味深かったのは市場の反応です。24時間取引できるビットコインの価格が、戒厳令直後に、一瞬、133milウォンから88milウォン程度に、約30%も暴落しました(Upbit)。韓国では、暗号資産取引のキャピタルゲインが非課税であることから(近々課税導入予定)、人気の投資対象となっています。中国等の投資家が韓国で取引し多額の送金を行っているという報道もかつて見られただけに、昨晩はその荒い値動きが注目を集めました。

このような市場の混乱は、他の市場に波及するのでしょうか。暗号資産取引は、送金手続きの関係等から他国の市場とのアービトラージが効きにくいことから、他国の市場への波及はあまり見られなかったようです。株式市場については、寄り付きは2%ほど安く始まりましたが、午後3時(日本時間)の時点では1%程度まで下落幅が縮小しています。その他の市場も、ソブリン(政府)の信用力を表すCDSやウォンのレートにやや悪化がみられた程度で概ね冷静です。中央銀行が、速攻で無制限の流動性供給を宣言したことや、株式を含む全ての市場を通常通り開いたことが功を奏したと考えられます。

現在、全く別の理由ではありますが、フランスやドイツでもソブリンの信用力が動揺しています。コロナ後に膨張した財政やインフレという他国にも共通する問題が背景にあることから、今後も同様にソブリンの動揺が発生する可能性は十分あると思われます。

2024年は選挙の年でした。来年はソブリンの混乱の年となるかもしれません。今回の事例は、突発的なソブリンリスク発生時に、政府はどのように市場を運営すべきなのか、投資家はどの市場を見るべきなのか等を知る上で有用な事例となったのではと思います。