長く金融市場を見ていると「歴史的転換」局面に遭遇することがあります。2008年のリーマンショックは100年に1度の金融危機と呼ばれましたが、後にノーベル経済学賞を受賞する当時のベン・バーナンキFRB議長は2007年サブプライムローンが問題になった当初、影響は限定的だと楽観視していました。

後にその見方を大きく修正しQE(量的緩和)政策に舵をきったことで評価を高めるのですが、ノーベル経済学賞受賞のバーナンキ氏でも歴史的金融危機の初動で判断を誤ったのですから、今起きている歴史的な転換と考えられるドイツの財政拡張による金利の急上昇が、後に一体どんな世界をもたらすのか正確に予想するのは難しいですね。少なくとも、2023年~2024年の2年連続マイナス成長のドイツの代表的な株価インデックス「DAX指数」は史上最高値へと上昇しているというのが目の前にある事実です。

ドイツには債務をGDPの0.35%以内に制限することを定める「債務ブレーキ(Schuldenbremse)」法があります。これは2009年に憲法に導入されました。リーマンショックの反省から財政規律を厳格化したものですが、これが足かせとなってドイツは財政拡張ができませんでした。

ところが2月23日のドイツ総選挙で第1党となった最大野党(キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首と、ショルツ首相が所属する与党(ドイツ社会民主党(SPD)が3月4日、債務ブレーキの緩和で合意したのです。GDP比で1%を超える国防費については対象から外す方向とのこと。インフラ投資のための5000億ユーロ(約80兆円)の特別基金の創設も検討しているということで、ドイツ株を押し上げています。

きっかけは米ウ首脳会談の決裂です。米国はすぐさまウクライナ支援の一時停止を決めました。これが財政規律を重んじるドイツを変えたのです。これは歴史的転換に他ならないでと感じていますが、この流れの中で世界の防衛関連株が上昇している、というのは不穏ですね。この先、世界に何が待ち受けているのでしょうか。