FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに舵を切りましたが、事前予想は25bp(ベーシスポイント)か50bpかで見方が割れていました。利下げが25bpであれば一部の期待を満たさずに金利上昇圧力とドル高が、50bpであれば金利低下圧力とドル安が想定されるという事前の見方は違和感ないものでしょう。 しかし実際には50bpの利下げが行われ、市場反応は事前予想と異なる米金利の上昇とドル高円安となりました。

最近米国でcrystal ball game(水晶玉ゲーム)という実験が行われました。参加者は経済統計の結果や金融政策の決定事項といったニュースを事前に知らされるという、仮想の世界でトレーディングを行うものです。 具体的にはウォールストリート・ジャーナルの一面記事を、実際のニュースより36時間前に与えられるものの、ニュース後のマーケットがどう反応したかは知らされないのです。

結果リターンは平均3.2%となりましたが、約半数がマイナスリターンに、そしてレバレッジも使われたことで16%程度は資産を失いました。参加者は知識レベルや経験によって3つのグループに分けられテストが行われましたが、結果ベテラントレーダーが優秀な成績を収めたものの、相場の方向性予測の的中率は63%にとどまりました。 そしてその他のグループのパフォーマンスは不振でした。マーケットを動かすであろう材料を事前に分かっていても、投資で成功するのは容易ではないことが示されたのです。

コロナ禍後のマーケットを振り返ると、株式市場は市場予想を上回る上昇局面を継続しており、予想値も上方修正が繰り返されています。金利や為替も振れる中でその予想が難しい局面が続いています。

この研究で示されたように事前に情報があっても市場を出し抜くのは困難だということは、市場は効率的だと言う見方を強めるものでもありますが、市場は瞬時に情報を織り込むとの見方がある一方、バイアスのある投資家の行動が急落・急騰といった非合理的な動きを生むなど市場の効率性については長らく議論となっています。

これからは大統領選挙や衆議院選挙といった政治面でのニュースも増える時間帯を迎えます。短期的な動向に目を配りながらも、その方向性を当てる難しさを認識しながら、中長期的な経済の方向性を考えるのが中長期的な運用にとっては大切なことでしょう。