日経平均4万円代回復のカギは米ハイテク指数の方向性

今週は米国で雇用統計以外にも経済指標の発表が多い点に留意が必要です。予想以上に良好な経済データに米金利が上昇の反応を示す場合には、相対的に戻りが鈍いハイテク指数のナスダックや半導体株指数(SOX指数)の下落につながり、日経平均もハイテク株安が下押し要因となります。

そうした意味でも、日経平均の4万円台回復は米ハイテク指数の方向性がカギを握ります。出遅れの観点から物色が強まれば日本株には追い風となる一方、8月上旬の安値からの反発が一巡することが米国株全体の調整につながる場合は逆風となります。

8月の急落・急反発では何も織り込まず、物色に変化なし

さて、8月相場では日経平均、TOPIXともに、月足ローソク足はかなり長い下ヒゲのある「陰線たくり足」となりました。実体部分(始値と終値の差)の133.81円に対して下ヒゲの部分(終値と安値の差)は7,491.63円。実体部分の約56倍の値幅が一時的に消えたということになります。結局、7月末の終値(39,101.82円)と8月末の終値(38,647.75円)との差は454.07円と、わずかな変動にとどまりました。

東証33業種の株価指数の順位を7月末と8月末で比べるとどうか。年初から7月末までの上位は、保険、銀行、石油石炭製品、証券、卸売、非鉄金属と続きます。一方、年初から8月末までの上位は、保険、石油石炭製品、非鉄金属、銀行、医薬品、証券と続きます。業種の順列は上位以外でも7月末と8月末を比べて、それほど大きくは変わっていません。8月中に日経平均が7,500円下げて戻ってきても、ほとんど何も変わっていないのです。

ただ、もしこれが長い時間をかけながら7,500円下げて戻ってきた場合はどうだったでしょうか。おそらく、物色の変化や材料の織り込みは長い時間をかけて変わっていくものですから、業種の順列も大きく変化していたと思います。

8月の急落・急反発があまりにも速かったため、何も織り込まないで元通りに戻ったと考えても差し支えないでしょう。そのため、当面の物色の中心はこれまでと変わらず金融に分類されるセクターでよいとみています。米国市場でも相対的に戻りが鈍いハイテク指数を横目に、S&P500金融は8月19日の時点で最高値を更新しています。ハイテクからの金融シフトはITバブル崩壊後にもみられましたが、今回もしばらく続きそうです。

日銀の利上げが為替や株価の大幅変動を増幅させたとの指摘が多かったですが、そうは言いながらもここまで株価は戻ってきました。年内の追加利上げも見込まれているようですが、もう怖くはないでしょう。