8月初旬~9月初旬、上海総合指数は下落基調、香港ハンセン指数は大幅上昇
2024年8月5日~9月2日までの中国株の騰落率は、上海総合指数は-1.7%、香港ハンセン指数は+6.0%となっています。上海総合指数は軟調な中国の経済状況を背景として、なだらかな下落が続いています。香港株は8月上旬の世界的な株価急落の影響を受けて8月5日までに大きく株価が下がる一方で、その後の世界的な株価回復の流れに乗って反発しています。
この期間に出た中国当局からの大きな政策として、最大5兆4000億ドル相当の住宅ローンの借り換えを、住宅所有者に認めることを検討しているという報道がありました。消費促進のために住宅ローンの借り換えを容認し、住宅ローンの負担を減らすことを検討しているという内容です。
これを受けて、8月30日に不動産株が大きく上昇した他、自動車関連株も大きく上昇しました。一方、住宅ローン借り換えが銀行の利ざやを圧迫するとの懸念から銀行株は下落しています。ただ、あくまで検討しているという報道であり、具体的な政策はまだ出ておらず、9月2日に不動産株は早くも反落となっています。
いずれにしても、中国独自の政策発表や経済指標が材料ではなく、世界的な株価反発による影響が主要因ではあるものの、香港ハンセン指数は8月16日に売買代金を膨らませて2%を超える大幅上昇となり、株価は200日移動平均線を上に突き抜けました。その後、株価が50日移動平均線も上に突き抜けていることから、チャート的には短期的な上昇トレンドに入ったと見られます。
2024年の香港ハンセン指数の流れを俯瞰すると、4月後半より大きく上昇し始め、5月20日までに大幅高となりました。中国当局による香港市場の支援策(中国本土経由の香港株投資に配当課税免除観測)や本土の不動産市場への支援策が好感され、割安だった中国株に世界的なマネー流入が観測されました。しかし、応急処置的な支援策が、根本的に不動産取引に依存する中国経済を立て直すかについては慎重な見方もあり、5月21日に大幅反落してから大きく調整してきた中、ここに来て、ようやく上昇基調に立ち戻りました。
香港株は国営企業が株価上昇を主導
ここで香港株の年初来の株価の上昇幅が大きい銘柄を見てみると、中国海洋石油(00883)や華潤電力控股(00836)、中国聯通(00762)、中国石油(00857)などが並ぶ他、国営の銀行や通信、電力大手も大きく上昇しており、全体的には国営企業が買われているといった印象です。もちろんテンセント(00700)や美団(03690)といった業績の良い民間のIT企業も、上昇していますが、全体には国営企業に押されている様子です。
一方、株価が軟調な銘柄には、バイオ医薬関連、EV関連、不動産、アパレル、消費財メーカー、カジノ企業などが挙げられ、多くは民営企業です。国営企業の株価が好調な理由としては、7月に開催された三中全会で、国営企業を柱に経済成長をとの指針が示されたことが関係しているかもしれませんが、具体的に強力な政策は出ていません。単純に中国の厳しい経済状況の中でも国がバックについているため破綻の心配が少ない一方、PERや配当利回りなどが割安な点が評価されて買われているのではないかと思います。
8月に発表された中国の経済指標はまちまちでした。まず、8月15日に発表された7月の鉱工業生産は前年比5.1%増と前月の5.3%増や市場予想の5.2%増を下回りました。一方、7月の小売売上高は前年比2.7%増と前月の2.0%増や市場予想の2.6%増を上回る実績となりました。
1-7月の固定資産投資は3.6%増と、前月実績や市場予想の3.9%増を下回りました。9月2日に発表された中国国家製造業PMIは49.1と前月実績の49.4や市場予想の49.5を下回りましたが、非製造業PMIは50.3と前月実績の50.2や市場予想の50.1を上回りました。
今後の香港株については、現状、世界的な株価動向の影響を大きく受け、世界的な株価が反発を続けるようなら、その影響で上昇基調が続きそうです。中国本土株は大きな政策が出るまでは軟調な株価基調が続く見通しです。