台風10号で被害に遭われた方へ心よりお見舞い申し上げます。

◆台風10号は、昨日9月1日の朝6時には東海道沖にあって、ほとんど停滞していた。台風に向けて暖かい湿った風が流れ込み、関東地方も前夜の蒸し暑さのままかと、半ば諦めて外に出たが思いのほか暑さは感じなかった。9月の声を聞いた途端に涼を感じた…わけではない。今年はもっと早い時期から秋の気配があった。具体的にいうと、お盆を過ぎたら、もう朝は涼しかったのだ。

◆長年の読者には呆れられるかもしれないが、本当にこのコラムで毎年のように書いている。甲子園が終わると秋風が吹く、と。どんなに猛暑の夏でもこの原理原則だけは不変のようだ、と。今年はさらに早くから涼しくなった。今年の夏は全般に過ごしやすかった。こんなことを書くと、「お前の感覚はおかしい」「ずっと冷房の中にいて外の殺人的暑さを知らないからそんなことを言うのだろう」「年々、温暖化や異常気象が進んでいる。今年の夏も記録的な猛暑だったはずだ」というようなクレームが寄せられることは想像に難くない。しかし、今年の夏は、少なくとも昨年よりはましだった。

◆データに当たるのがいちばん手っ取り早い。気象庁のHPで詳細なデータが確認できる。それによれば2023年8月の東京は、平均気温が29.2度、最高気温が34.3度、最低気温が26.1度だった(8月1ヶ月の各平均値)。2024年8月は平均29.0度、最高33.6度、最低25.7度だった(同)。平均も最高・最低も今年のほうが気温が低い。温暖化や異常気象が進んでいるのは間違いないが、「気温が年々上昇している」というのは必ずしも真実ではない。

◆しかし連日のように「異常気象」「記録的な猛暑」と報道されれば「気温が年々上昇している」と思い込んでしまうのは自然なことだろう。何事においても言えることだが、思い込みによる判断は危険である。特に投資においては、思い込みを排除することが肝要である。みんなが買っているから、話題の金融商品だから、人気の高い投資信託だから…だから大丈夫だ、と思うのは何の根拠もない。

◆意思決定をする前に一呼吸置いて、再考してみよう。ボブ・ディランに「くよくよするなよ」という曲がある。原題は”Don’t Think Twice, It’s All Right”という。Don’t Think Twiceではダメである。ぜひ、Do Think TwiceそれがAll Rightだ。