昨日の米国では、3つのデータが特に気になりました。
一つ目は消費者信頼感指数。全体の傾向を示す指標は103.3と、前月の数値も事前予想も上回る強さでした。が、全体の強さ以上に興味深かったのは、格差の広がりです。年収1.5万ドル(約217万円)~2.499万ドル(約360万円)の低所得者層の今後の景況感は、コロナ後の最低値近辺の80.2と前月から大きく悪化しました。一方で、12.5万ドル(約1800万円)以上の最富裕層の景況感は116.0と、このところ改善傾向にあります。もっと高所得の区切りがあれば、更に強かったかも、と思います。
こうした違いの背景の一つが、昨晩発表のもう一つの指標、S&Pケースシラー住宅価格指数です。6月の全米の住宅価格は前年同月比+5.4%と、前月からやや鈍化はしましたが、依然上昇基調が続いています。特に、「コンポジット10」という10大都市の指数は+7.4%、うち、ニューヨークは+8.9%と、まだ猛烈な伸びを続けています。これは6月の数値ですから、その後の長期金利の低下で上昇が加速している可能性もあります。
3つ目の指標はダウ平均株価指数。2日連続で史上最高値を更新しています。米国で株式を保有する人の割合は過去最高の58%に上り、1990年の30%台から大きく上昇していて、株価が人々のマインドに与える影響は過去に比べて強くなっているとみられます。特に高所得者層の保有比率の上昇が顕著で、所得上位10%の人々はいまや95%以上の人々が株式を保有するのに対し、最も所得が低い層では20%以下に低迷しています(データはすべてFRB、2022年)。
利下げは、一見、失業者の増加やローンの延滞を防ぐという弱者寄りの政策に見えますが、資産価格を後押しするなら、むしろ格差を広げる要因にもなりえます。米国は、以前にも増して「金持ち経済」の様相が色濃くなるかもしれません。以前にも増して、米国の富裕層が何を求め、どのように経済をけん引していくのか、トレンドを敏感に確認していく必要があると思います。