お正月の風物詩「箱根駅伝」の5区で、中国人インフルエンサーが車道に侵入して動画を撮影するというハプニングがありました。この件は危険な行為だとして中国でも批判されていますが、箱根駅伝を動画で撮影すれば多くの中国人がそれを見るだろう、つまりバズることがわかっていたための行動だったものと推察されます。中国政府は「健康中国」政策の一環として、スポーツイベントを推進しています。マラソン大会の開催も地方経済の活性化や観光振興の一環として奨励されており、2010年代初頭には数十だったマラソン大会が、現在では年間数千規模にまで拡大しているのだそうです。
そこで脳裏に浮かんだのがアシックスの株価。パンデミック前には500円に満たない株価水準にありましたが、2025年には3300円台にまで大きく上昇しています。箱根駅伝でのランナーが履くシューズブランドは例年話題となりますが、今年はアディダスが76人で36.2%でトップ、2位が54人、25.7%の着用でアシックスだったのです。ちなみに3位につけたナイキは49人、23.3%のランナーに着用されていましたが、わずか4年前の2021年は、ナイキの厚底がブームとなりナイキの着用率は95.7%と圧倒的だったことを考えると、ナイキの凋落が大きいことがうかがえます。株価も2021年には160ドル台にありましたが足下では半値以下の70ドル台へと沈んでいます。中国のマラソンブームだからといって、どのシューズメーカーも売れているというわけではないのです。スポーツに詳しくないので何故なのかはわかりませんが、スポーツブランド業界ではなにか大きな変化が起きているようですね。
アシックスは現在海外販売比率が80%にものぼりますが、欧州27.4%、北米21.2%、中華圏は14.4%でまだそれほど中国市場での売上が大きいわけではありません。しかし、箱根駅伝を舞台にした日本の小説「風が強く吹いている」は漫画となり2018年にはアニメ化され日本だけでなく中国でも人気化しているといいます。故に箱根駅伝に乱入し撮影するインフルエンサーの暴挙につながったのではないかと思います。
アシックスは「JPXプライム150指数」の銘柄にも新規選定されていることから注目され上昇しているという側面もあります。JPXプライム150指数は「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」というコンセプトで選定されますが、なぜ圧倒的な人気を誇ったナイキが低迷し、アシックスの業績が急回復したのか興味はつきませんね。
※アシックスの株式の購入を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。