大阪郊外のベッドタウンで育った私は、子どもの頃から「広い世界を見てみたい」と夢見ていました。都会に出たい、いずれは世界に出たい。そんな憧れを抱きながらも、その想いは時間が経つにつれて現実の中に埋もれてゆき、進学では、経済的な事情を理由に自宅から通える国公立の学校を選び、海外留学への想いも心の奥にしまい込みました。就職して大阪の梅田支店に配属されても、心の片隅には「外の世界」への夢が消えずにありましたが、具体的に行動を起こすことはありませんでした。希望を出して東京勤務にはたどり着いたものの、海外勤務の夢は追いかけませんでした。
その頃の私は、どこかで「自分が置かれた環境」のせいにしていたのだと思います。帰国子女や海外留学経験者、日本以外のルーツを持つ人たちがまぶしく見え、羨ましいという気持ちを抱えていました。彼らは私にとって、手の届かない憧れの存在だったのです。
その後2回転職して今の会社で約16年を過ごし、気づけばグローバル企業のCEOという立場にいます。社員の過半数が日本国外に住み、海外の投資家等とのやり取りも多くあります。環境は大きく変わりましたが、いまだに「英語へのコンプレックス」は拭えません。学生時代にもっと挑戦していればよかった…。そんな後悔が頭をよぎることも少なくありません。
2025年の目標も、「世界で活躍できる経営者に近づくこと」です。そんな私が今年最初に読んだのが、『ロールモデルがいない君へ』という本でした。ここで本の紹介はしませんが、この本には、多文化の中で育った人たちの苦労や葛藤がリアルに描かれており、私の心に深く響きました。
私が羨んでいた環境で育った人々もまた、アイデンティティの揺らぎや周囲の無理解に苦しみながら、必死にもがいて生きてきたのです。その姿を知ることで、私は改めて「環境のせいにしてはいけない」と気づきました。そして、どんな環境であれ、自分に与えられた状況の中で精一杯やることが重要であると実感しました。
人間は挑戦し続ける限り、ずっと苦労するものです。だからこそ、自分が信じる目標に向かって行動し、自分の力で物事に向き合う姿勢を大切にしたいと思います。同時に、この本を読んで、日本の教育がもっと多様性を尊重し、子どもたちに「広い視野」を育む機会を与えられるものになってほしいと強く思いました。価値観は一つではなく、人それぞれ違っていい。その大切さを次世代に伝えていかなければなりませんね。
私の人生における苦労や葛藤は、他の誰かのそれと同じではありません。それぞれの経験を通じて見える景色は異なり、その中でどう生きるかは自分次第です。この本を通じて、これからも自分なりに世界に挑戦し、苦労と向き合おうと決意を新たにしました。
新しい年、新しい挑戦。そして、新しい自分との出会いに期待を込めて、今年も歩み続けていきます。始まりはいつだって今。さあ、まだまだこれから!