日米金融当局トップの発言に波乱はなし

先週の最大の焦点だった日米金融当局トップの発言はマーケットにとって無難なものだった。植田日銀総裁は衆参閉会中審査の答弁で「経済・物価の見通しが我々の思っている姿通りに実現する確度が高まると確認できれば、今後、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な姿勢に変わりない」と発言。7月末の日銀金融政策決定会合後の記者会見と同じトーンの発言だったことから、株価が弱含む場面もあったが、午後の参議院財務金融委員会では、「内田副総裁の金融政策の考えと違いはない」と説明したことで株式市場は持ち直し、結局、先週23日の午後は上昇して終えた。

一方、米国のジャクソンホール会合は株式市場にとって、ほぼ満点の回答だったろう。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日の講演で「政策を調整すべき時が来た」と次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げをほぼ明言した。これを受けて米国株は大幅に上昇した。

しかし、23日の大証夜間取引の日経225先物は、通常取引終値比130円安の38280 円で取引を終えた。米国の利下げは米国株にはポジティブだが、それによる米国金利の低下を受けて為替が円高に動けば日本株のマイナス材料になる。先週末はまさにこの展開だった。

米国マーケットは再度高値更新か

今週、米国株市場でダウ平均やS&P500は再度、史上最高値を更新する可能性がある。それは投資家センチメントを改善させ、日本株の追い風にもなるが、為替が円高基調で動けば日本株は上がらない。米国株高と円高の好悪材料の綱引き相場となりそうだ。

今週最大の材料はエヌビディアの決算

さて、ジャクソンホールを終えた8月最終週の今週、最大かつ唯一の材料とも言えるのがエヌビディア[NVDA]決算である。エヌビディアは28日、2024年5~7月期の決算を発表する。QUICK・ファクトセットによると、5~7月期の業績は売上高が前年同期比2.1倍の約286億ドル、純利益は2.4倍の約149億ドルとなる見通しだ。

3ヶ月前の5月に開示された2024年2~4月期の決算発表では売上高が前年同期に比べ3.6倍に増えたことで、日米の株価が「エヌビディア祭り」に沸いた。今回、市場の予想通りなら売上・利益ともに2倍程度の伸びだが、市場がそれで満足するかどうか。

決算の数字もさることながら、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOの決算説明会での発言にも注目が集まる。いずれにせよ大きな波乱材料となる可能性がある。順調に戻りを辿った日本株相場だが、このビッグイベントの前に利益確定売りが増えるシナリオも考えておきたい。

予想レンジは3万7500円~3万9000円とする。