ウォーレンバフェット氏が4-6月期に株式のポジションを減らし現金保有高を高めていると報道され、5月の株主総会では現金の使用を急ぐつもりはないとの発言もありました。
一般的に運用額が大きくなるほどリバランス(ポートフォリオのウェイト変更)には時間がかかりますので、短期的な市場変動に合わせて動くのではなく大局観の中で徐々にポジション変更を行うものです。市場変動を前に大局的な変化が察知されていたのでしょうか。同氏は長期的に米国株式市場には強気で知られていますし、これまでも市場の危機時に積極的な買い姿勢が見られました。今回も本人曰く「妥当な価格」への回帰を待っているのでしょうか。
8月に入って日本株やドル円の急変動を経験しました。8/5の日経平均株価の下落率-12.4%について1970年以降の日々の騰落率から統計的な発生確率を計算すると4.6×10-22(0.000000000000000000046%)となり、また翌日の反発+10.23%は確率1.8×10-15ですからともにほぼ起こりえない事象を見ていることになります。
このように日々のリターンを統計的に見るととても起こり得ない確率の出来事が実際は良く観察されています。その都度その要因について分析しますが、まずは現状と過去を見ながら将来を考えることになります。
市場が急変動する際は振り返ってみてもその要因とともに名前付けされて語られます。コロナやリーマンショックのように原因が明確な場合もあれば、ブラックマンデーのように原因が諸説言われる場合もあります。今回はシナリオ変更を強いられる出来事が発生したというよりは、先行きの不透明感を嫌気したポジション主導による相場変動に感じられます。この動きの正当性が今後明らかになっていくでしょうが、経験則を参照しながらも、「歴史は繰り返さない、ただし韻を踏む」ことは留意されます。
今回の株価の動きは上述の通り統計的にはほぼ起こりえない動きですが、この世界では前例のない出来事が常に起きており、よって歴史を理解しながらもそれを今後の絶対的な指針とすべきではないでしょう。過去の最悪局面はいつもその時には前例のない出来事であり、今後の推移についても過去と同様に推移するとは考えづらいわけです。今回も新たなサプライズが起きました。
コロナを経て我々の置かれている経済環境は大きく変化しております。似たような局面は過去になく、よって過去を参考にするよりも今後も前例のない動きになりうる点には注意が必要です。現在ピークアウトしつつある経済環境の把握と今後の推移を注視することが重要でしょう。経済が巡航速度を維持できるのであれば株価も同様でしょうし、株価のリスクは景気後退のリスクとなります。
その点を肝に銘じながら、一方で感情的な投資行動が繰り返されることはまさに韻を踏む注意点でしょう。今回もポジション整理が相場を動かした面は否めないですが、我々中長期の資産運用においては失敗につながりかねない感情的な投資行動は避けるべきです。