先週の上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数、香港ハンセン指数はともに下落しました。特に週末は中国の10月の輸出が前年同月比5.6%増と9月の0.3%減から回復したにもかかわらず下げ足を速めています。理由は3つあります。1つは11月9~12日に開かれる中央委員会第三回全体会議(三中全会)を前にしていたことです。今回の三中全会での大きなテーマの1つは規制緩和です。規制緩和により市場メカニズムが導入されることは長期的に中国にとって良いことなのですが、短期的には株式市場にとってマイナスです。なぜなら、株価指数に大きな構成ウェートを持つ大手国営企業の既得権益を損なうもので、利益率が下がると考えられるからです。たとえば、金利の自由化が検討されていますが、これは株式市場で大きな時価総額を持つ銀行株の収益性悪化につながります。
2つ目の理由は9日に発表予定であった10月の中国の消費者物価指数(CPI)と固定資産投資の結果発表前であったことです。特にCPIは9月に、8月の2.6%から3.1%に大きく上昇しており、10月も高い数字になるのではないかと懸念されていました。しかし結果はエコノミスト予想の3.3%を下回る3.2%で着地し、加速はしたものの予想は下回っています。そして3つ目の理由は10月の米国雇用統計発表前であったことです。この結果によっては米国の金融緩和策縮小が早期に開始されるとの懸念があったわけです(ちなみに、こちらは予想以上の強い結果が出て、米国株は上昇したものの、中国株に連動性があるブラジル株は下落しています)。
今週は、やはり三中全会がテーマになってくると思われます。今回の三中全会は、輸出や公共投資主導型の経済から国内消費や技術革新主導経済への転換を討議し、承認する内容になります。一番大きなポイントは、前政権が既得権益層の抵抗により出来なかった改革や規制緩和を推し進められるかどうかです。そして、その具体的な中身として討議されるのが前述の金利の自由化などです。改革が断行されれば株式市場は短期的な下落を招く可能性があるものの、長期的には上昇への期待感が出てきます。一番悪いのは、思い切った改革が行われずに現政権への信頼度が揺らいでしまうことです。この場合、一時的には小康状態を保てると思いますが、長期的な展望は開けないままとなってしまいます。
コラム執筆:戸松信博