2024年7月19日(金)8:30発表
日本 全国CPI 2024年6月

【1】結果:CPI主要3指標は概ね横ばい

2024年6月の全国消費者物価指数は、前年比ベースで2.8%増、生鮮食品を除く総合指数(以下、「コアCPI」)は同2.6%増と、2指標ともにわずかに市場予想を下回る結果となりました。コアCPIは日銀のターゲットとする2%を27ヶ月連続で上回りました。

生鮮食品・エネルギーを除く総合指数(以下、「コアコアCPI」)は市場予想通りの前年比2.2%増で、家庭用耐久財などが上昇に寄与し反転、2%台を維持しています。3指数を総括すると概ね横ばいの動きで、食品類は下落基調が続くもエネルギー関連がそれを相殺し、2%台で推移しています。

【図表1】2024年6月全国消費者物価指数の結果
出所:総務省よりマネックス証券作成
【図表2】消費者物価指数の推移(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:サービス価格は小幅に上昇、人件費転嫁が期待される

コアCPIの前年比は前回5月公表値2.5%増から、0.1%ポイント上昇しています。寄与度の推移を確認すると、前回、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の終了の影響で大きく上昇したエネルギーはほぼ横ばいの結果となっています(図表3・4)。一方で、財とサービスの寄与が緩やかながら上昇しています。財・サービスの変化率をみると、生鮮食品を除く財は上下がありながらも足元では前年比3.5%増、サービスは緩やかに縮小傾向であったところが、今回6月の公表値では1.7%増(前回5月:同1.6%)と下げ止まった格好です(図表5)。

それぞれの内訳をみると、財に分類される品目では家庭用耐久財や工業製品がプラスに推移し、サービスでは宿泊料や家事関連サービスが上昇しています。総務省によると、サービス価格に人件費が転嫁される動きは、これまでのトレンドと同様に確認されているわけではないとのことで、注目点はこのトレンドが転換すること(サービス価格が向こう数ヶ月においても上向いていくこと)と考えています。

【図表3】コアCPIの寄与度分解(前年比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成
【図表4】コアCPIの寄与度推移(%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成
【図表5】財・サービス別の消費者物価指数推移(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【3】所感:先行きのインフレは政府支援の再開を理由に縮小を想定

6月のCPIの結果は大きなサプライズもなく無難に消化できる内容と考えられます。今月7月末に実施される日銀の金融政策決定会合において、市場では国債買入れ減額の規模と追加利上げの実施有無の2点が注目される中で、今回のCPIの結果はコストプッシュインフレを抑える必要があると判断される強いものとはいえないでしょう。そのため、経済の腰を折らないためにも、追加利上げの決定は実施されないものと筆者は考えます。

また、ここ数ヶ月、CPIを押し上げたエネルギー関連についても、政府による電気・ガス価格激変緩和対策が8月から10月使用分について、酷暑乗り切り緊急支援という形で、一時再開することが決定しました。CPIへの反映は9月公表値からとなりますが、この政策によって一時的ではあるもののエネルギーのプラス寄与は縮小するでしょう。上述の通り、食品の価格も落ち着きを見せる中で、夏から秋にかけてのインフレ基調は落ち着いていくものと筆者は考えています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太