日経平均はじわじわと上昇を始めました。これまでは38,000~39,500円の狭いボックス圏で推移していましたが、ここにきてその上放れを感じさせる動きとなっています。特にきっかけがあったわけではなく、日柄調整の進展やなだらかな金利引上げピッチの確認に加え、3月決算企業の株主総会がほぼ終了したことも灰汁抜けになったのではと推察します。
株主総会は年々株主提案が増えており、成果の出ていない経営陣への厳しい評価も顕在化してきました。株主総会というイベントリスク越えが安心感に繋がったのかもしれません。一方で、円安がさらに進行してきたことには注意が必要でしょう。今後の金利動向も併せ、まだ手放しで上昇相場入りと言える状況ではないと位置付けたいところです。
7月26日より、いよいよパリオリンピックが開幕
さて、今回は「パリオリンピック(パラリンピックも含む)」を採り上げてみましょう。パリオリンピックは7月26日から始まります。前回の夏季大会は東京大会でしたが、この大会がコロナ禍で1年遅れたことで、インターバルは通常の4年ではなく3年というやや短い期間となりました。そのため「もうオリンピックが来るのか!」というのが率直な印象ではないでしょうか。日本選手をはじめ、世界の各選手の健闘が楽しみです。
このコラムにおいても、過去に何度かオリンピックをテーマに採り上げています。そこでは、かつてはテレビなどの観戦機器を、近年は有料放送会社やスポーツクラブなどの個人向けスポーツ施設を、それぞれ注目できる投資先として挙げてきました。今回のパリオリンピックにおいても基本的なその傾向に変化はありません。しかし、今回のコラムではその中でもオリンピックのスポンサー企業から投資対象を探ってみることにしたいと思います。
パリオリンピックを支えるパートナー企業、市場におけるその優位性とは
パリオリンピックにおけるスポンサーは「パートナー企業」と位置付けられ、国際オリンピック委員会(IOC)の管理するワールドワイドパートナーと、各国・地域のオリンピック委員会(NOC)や大会組織委員会(OCOG)の管理するパートナーで構成されます。
パートナー企業はオリンピックに関連するマークやロゴ、選手肖像、その他素材の使用権などを使用できる権利が付与されることになります(日本オリンピック委員会(JOC)の管理するパートナーの権利行使は日本国内限定です)。
当然、パートナー企業にとってはオリンピックの盛り上がりを自社の広告宣伝にフルに活用することができるというメリットがあります。社名の世界的な露出機会増に加え、世界最先端の技術やサービス提供などにより、市場への浸透力もまた大きなものが期待できると言えるでしょう。パートナー企業もオリンピックの成功に向けておそらく多大なコスト(資金、製品・サービスの開発・提供など)を提供することになるのでしょうが、期待するメリットはそれ以上になるという算段があると推察します。
また、昨今重視されている「社会への貢献」といった視点にも積極的に対応するという姿勢を示していると言えるでしょう。ただし、気を付けなければならないのは、そういった効果はすぐに顕在化するものではないということです。
オリンピック期間中の露出拡大効果は確かに即効性を期待できるものですが、それだけ目に留まれば当然、大会終了後は効果剥落の影響を受けてしまいます。スポンサー企業の狙いは、より長期的に自社の社会的ブランドを浸透させ、技術・サービスで最先端を走るための仕組みを確保することにあると言えます。オリンピック関連での株式投資を考える上では、そのような長期的な目線が必要であることに留意いただきたいところです。
投資判断に役立てたい、パリオリンピックのパートナーに名を連ねる日本企業
現在、IOCはワールドワイドパートナーとして15社を選定しています。このうち日本企業はブリヂストン(5108)、パナソニック ホールディングス(6752)、トヨタ自動車(7203)の3社です。いずれもグローバルに展開する巨大企業であり、ワールドワイドな露出の増加はこれら企業にとって認知度やブランド力の向上に資するのではないかと想像します。
また、JOCの管理するパートナー企業は現在16社が数えられており、このうち、Tier1(最上位パートナー)カテゴリーに属するのが、アシックス(7936)、ENEOSホールディングス(5020)、KDDI(9433)、東京海上ホールディングス(8766)、日本生命、三井不動産(8801)の6社となります。
また、Tier2カテゴリーのパートナー企業には、味の素(2802)、エアウィーヴ、駐車場スペースのタイムズを擁するパーク24(4666)、久光製薬(4530)の4社が、Tier3カテゴリーではANAホールディングス(9202)、日本航空(9201)、丸大食品(2288)といった上場企業や東武タワースカイツリー(東武鉄道(9001)の子会社)、LIVE BOARD(NTTドコモ、電通グループ(4324)、博報堂DYメディアパートナーズの合弁会社)、外資系のインターブランドジャパンが名を連ねています。
これら企業群がどのような狙いや想いでパートナー企業として参加しているのか、詳細は各社のホームページなどで確認してみてください。息の長い効果の発現を期待しての株式投資は、一定期間でのパフォーマンスが問われる機関投資家にはなかなかできないアプローチであり、個人投資家ならではの強みとも言えるものです。新NISAの投資対象として機能する可能性もあるでしょう。選手の応援はもちろんですが、そのような観点でオリンピックを眺めてみるのも面白いかもしれません。