6月初旬~7月初旬の香港株は調整段階

2024年6月3日~7月1日までの中国株の騰落率は、上海総合指数が-2.7%、香港ハンセン指数が-3.7%となっています(香港市場は7月1日が香港特別行政区設立記念日で休場のため、6月28日までの終値)。

調整している中国株ですが、ここまでの動きを再確認すると、まず、5月は香港ハンセン指数については中国証券監督管理委員会(CSRC)が香港と中国本土の株式市場の相互取引制度(ストックコネクト)を拡充し、香港の国際金融センターとしての地位を高める5項目の措置を打ち出したことから大きく上昇していました。

さらに5月17日には、中国当局が住宅ローン規制を緩和する一方、地方政府に売れ残った住宅の買い取りを求めるといった不動産支援策も出てきました。また、同じく5月27日には国内の半導体産業を支援するために480億ドル(約7兆5000億円)近い規模のファンドを創設することを発表しました。

ただ、短期的に大きく上昇してテクニカル的な調整が入りそうだったところへフランスの政局問題が出てきて(これまで無かった極右の政権が出来る可能性が出てきた)、不透明感からフランスの株価やユーロが下落。これに伴って資金が安全資産と目されている米ドルや米国株に集中し、それ以外の国からは資金が抜けるという減少が発生しているようで、この動きに香港株も影響を受けたと言えます。

また、中国株にとって重要なのは政策ですが、追加で出てきた政策は首都である北京市が6月26日に住宅ローン金利と頭金要件を引き下げる住宅購入支援策を発表したことでしょうか。これで上海、深セン、広州などの他の一級都市に追随したことになります。具体的には初回の住宅購入者向けの最低頭金比率をこれまでの30%から20%に下げ、2件目については地域に応じて40%と50%から、30%と35%に引き下げるとしています。

中国経済は軟調続くも優良企業の業績は好調

6月に発表された中国の経済指標はまちまちでした。まず、6月17日に発表された5月の鉱工業生産は前年比5.6%増と、前月の6.7%増や市場予想の6.2%増よりも低いものでした。一方で、5月の小売売上高は前年比3.7%増と前月の2.3%増や市場予想の3.0%増よりも高い実績となりました。5月の固定資産投資は4.0%増と、前月実績・市場予想の4.2%増よりも低い実績となっています。

6月30日に発表された中国国家製造業PMIは49.5と市場予想・前月実績と同じでした。非製造業PMIは50.5と前月実績の51.1や市場予想の51.0を下回るものでした。さらに7月1日に発表された6月のCaixin中国製造業PMIは51.87と、市場予想の51.5や前月実績の51.7を上回るものでした。このように中国の経済指標はまだら模様で、不動産不況などの影響を乗り切れていないものと考えます。

しかし、優良企業の業績は好調であり、株価も大きく上昇している銘柄が複数あります。例えば、中国海洋石油(00883)は川上の生産部門に集中し、生産コストの低い石油会社ですが、原油価格が比較的堅調な上に生産量も増えていることで2024年第1四半期の業績増収増益、株価も上場来高値を更新しています。

2022年9月に米ボストンで立ち上げた子会社「Temu」が業績を牽引しているPDDホールディングス[PDD](米国ナスダック上場)も第1四半期は大幅増収増益、株価は2023年来の高値を更新しています。香港市場で時価総額最大のテンセント(00700)も株価は今ひとつですが第1四半期は増収増益を維持しており、PERは17倍前後と割安感があります。

その他では、紫金鉱業(02899)が金や銅価格が上昇している上、生産量を伸ばして増益。アリババ・グループ・ホールディング(09988)は予想外の小幅減益となったものの株価は割安感を保っています。また、新型EV「SU7」が想定以上の受注となった小米(01810)は第1四半期に増収増益で株価も比較的堅調です。このように考えていくと現在の中国株の短期的な調整は優良株を買うチャンスなのではないかと考えます。