2024年6月13日(木)21:30発表(日本時間)
米国 生産者物価指数(PPI)
【1】結果:総合、コアPPIいずれも市場予想・前回結果を下回る
5月の米生産者物価指数(PPI)は、前年比+2.2%を記録し、前回結果(+2.3%)と市場予想(+2.5%)を上回る結果となりました。また、物価動向の風向きを確認できる前月比ベースでは-0.2%と予想に反して下落に転じており、物価の伸びに鈍化がみられます。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIは前年比で2.3%、前月比で±0%となり、いずれも市場予想と前回結果を下回りました。
【2】内容・注目点:エネルギー価格が大幅下落。PCEコア算出に用いられる項目に要注目
CPIの先行指標として注目されるPPIとは
そもそも米PPIとは、生産者物価指数のことを指し、原材料や製品を対象として生産段階での財・サービスの価格変動を測定しています。
例えば、机などの家具で考えると、企業が机という商品を生産するために仕入れる木材や金属といった原材料の価格変動を測定するのがPPIであるのに対し、CPIは最終的に消費者が購入する際の机の価格変動を測定します。
必ずしもそうとは限らないものの、一般的に、企業が仕入れる原材料の価格変動が、最終的に消費者が支払う価格に反映されることが多いため、PPIはCPIの先行指標として注目されています(図表2)。
5月PPIは、インフレ鈍化の先行きを示唆
今回5月のPPIの結果は、総合・コア指数いずれも市場予想を下回り、特に前月比ベースでは下落に転じたことから、インフレ鈍化の先行きが示唆される結果となりました。
図表3の通り、内訳(前月比)を見ていくと、サービス価格は前月比+0.0%で横ばいとなりました。また、サービス価格の中身を詳しく見ると、外来医療費が+0.5%と上昇した一方で、航空運賃(-4.3%)やポートフォリオ管理費(-1.8%)、宿泊費(-0.5)は下落しています。
これらの項目は、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の判断においてインフレ指標として採用しているPCEコア価格指数の算出に用いられるとされているため、金融政策の動向を予想する上では特に注目が必要です。今回の結果は、航空運賃の大きな下落の他、全体的に価格下落が見られ、月末のPCE価格指数の鈍化に期待が高まる結果でした。
一方で、財価格も-0.8%と、前回4月の上昇から一転、下落となりました。ガソリン価格の大幅な下落(-7.1%)を筆頭としたエネルギー価格の低下(-4.8%)によるものです。エネルギー価格がPPI全体に占める割合は約5.5%と低いものの、様々な財・サービスの生産や物流に関わるため、その影響は大きいと言えます。
そのため今回のPPIの低下は、エネルギー価格の大幅な下落に引っ張られたものと言えますが、エネルギー価格の変動は激しいことから、今後の推移に注目が高まります。一般的に、エネルギー価格は夏場のドライブシーズンに向けて需要が高まり、価格が上昇する傾向にあります。
【3】所感: PPI下落でインフレ退治に兆し。次の焦点は6月18日発表の小売売上高
市場予想を下回ったPPIに加えて、同日に公表された週間の米新規失業保険申請件数が市場予想を上回る(=雇用が弱い)結果となったことから、インフレ圧力や労働需給が緩和しつつあるとの見方が広がり、早期の利下げ期待が高まりました。これを受け、米金利は低下で反応しています。
上述の通り、PPI(生産者物価)はCPI(消費者物価)に先行する傾向があります。今回、PPIが低下したことはインフレ鈍化の先行きを示しており、早く利下げを実施したいFRBにとってはポジティブな結果と言えるでしょう。6月12日に公表されたCPIも足元のインフレ鈍化を示しており、徐々にインフレに落ち着きが見え始めています。
そうなると、次は経済が過度に落ち込みすぎないか、といった点が重要であり、焦点は6月18日発表の小売売上高に移るでしょう。米国では個人消費がGDPの約7割を占めるため、その動向を確認できる小売売上高に注目が集まります。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐