2024年6月12日(水)21:30発表(日本時間)
米国 消費者物価指数(CPI)
【1】結果:総合、コアCPIいずれも市場予想を下振れ
5月の結果は、全ての品目を含む総合CPIと、価格変動が大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIのいずれも市場予想を下回る結果となりました。前回4月の結果と比べると、前年同月比・前月比いずれも低下しており、全体としてインフレ鈍化を示しています。
【2】内容・注目点:パウエル議長注目のスーパーコアが遂に前月比でマイナスに転じる
図表2の通り過去の推移をみると、米国の消費者物価指数は、2022年6月に9.1%で天井をつけてから、2023年にかけて3.0%まで落ち着いた後、しばらく足踏みが続いていました。2024年1~3月には想定を超える強さを見せていたためインフレ再燃が警戒されていましたが、今回5月は低下し、FRBが掲げるインフレ退治に向けて一歩前進しました。
次に図表3の通り、前月比ベースで内訳を詳しくみると、食品は+0.1%と概ね横ばいでした。外食費は+0.4%とやや高いものの、食品全体としてはここ数か月+0.1%以内で推移しており、食品インフレには直近落ち着きが見られます。
エネルギーは前月比-2.0%と4ヶ月ぶりにマイナスに転じました。なかでも、2月から+3.8%→+1.7%→+2.7%と上昇基調が続いていたガソリン価格が今回-3.6%と大幅に低下しました。このところの原油価格の下落の影響とみられます。ガソリン価格は夏場のドライブシーズンに向けての需要増加で上昇する傾向があるため、今後の推移に注目です。
食品・エネルギーを除いたコア財は前月比0.0%で横ばいでした。内訳としては、新車が-0.5%で4ヶ月連続下落となったほか、アパレル価格が-0.3%と4カ月ぶりに下落しています。一方で、中古車は+0.6%で3カ月ぶりに上昇となりましたが、前年比ベースでは-9.3%と大幅に低下しているため価格下落の勢いがひとまず落ち着いたといったところでしょう。
そして注目のサービス(エネルギーを除く)は、前月比+0.2%を記録し、前回4月の+0.4%から伸びが鈍化しました。サービス価格は年明けから高水準での伸びが続いてきましたが、今回5月は輸送サービスの下落(-0.5%)などを受け、落ち着きを見せています。
住居費は前月比+0.4%で4ヶ月間連続の横ばい推移となりました。住宅インフレの粘着性を意識させるものの、勢いを増して上昇してきているわけではありません。図表4の通り、前年比ベースでは、下落傾向にあることが分かります。
また、FRBのパウエル議長が特に注目しているコアサービス価格から住居費を除いた通称スーパーコアの数値は、前月比-0.04%と下落に転じました。前年同月比ベースでは+4.8%と依然として高い水準にあるものの、今回前月比で下落に転じたことはインフレ減速に向け良い材料といえるでしょう。
【3】所感:インフレ退治に向け一歩前進、9月利下げは可能か
FOMCと同日の発表ということで、今回のCPIの結果にはいつも以上に市場の注目が集まりましたが、結果は予想以上にインフレ減速を示す良好なものであり、米金利は低下・株式市場は上昇で反応しました。
内訳をみても、サービス価格の上昇速度に鈍化が見られたほか、パウエル議長が注目するスーパーコアは前月比で下落に転じており、インフレ再燃懸念を和らげる安心感のある結果だったといえます。
とはいえ、エネルギー価格の低下による一時的な下落圧力が掛かっただけと捉えることもできるため、今後数ヶ月に渡ってトレンドとして下落していくか確かめる必要があります。
また、雇用統計では賃金の高止まりを示していることから今後サービス価格に影響してくる可能性も考えられるため、まだまだインフレ退治が完了したとは言えません。9月に利下げをするには、今回のような結果が今後数ヶ月続くことが求められるでしょう。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐