インバウンド需要も取り込み、急成長を遂げるカプセルトイ市場
商業施設などで見かけることが増えたカプセル自動販売機。一般的には「ガチャガチャ」や「ガチャ」と呼ばれるもので、様々なカテゴリーのカプセルトイが売られており、1店舗に数十台を並べた専門店も少なくない。日本独自の文化としても関心が高まり、インバウンド（訪日外国人）からも人気となっている。何が出てくるかわからないドキドキ感や、シリーズを揃える楽しみが人気となっている要因とみられる。また、SNS映えする商品も多いようだ。
日本カプセルトイ協会によると、2023年度の市場規模（製造出荷ベース）は約1150億円で、前年の720億円から60％増となっている。
発表資料によれば前年度に引き続き大型商業施設の空き区画への出店増加、さらにファッションビルや百貨店、駅構内などに自販機の設置が増加した。200以上のカプセル専門店がオープンしたという。外国人観光客の来日理由の上位に「サブカルチャー」が挙げられるようになり、渋谷や原宿、京都などで購入する人が目立っている。
カプセルトイが誕生した背景とその変遷
日本では1960年代頃から駄菓子店や玩具店の軒先に「子供用玩具」として置かれ始めたとされるカプセル自販機。とはいえ、元々は米国がルーツで、駅のホームなどで自販機としてガムやキャンディを売っていた。その後カプセルに玩具を入れるようになり、1930年代には子どもに人気となったという。これが日本に持ち込まれたというのが通説だ。
その後本格的に人気になったのが1980年代。1983年にバンダイナムコホールディングス（7832）が発売した人気漫画『キン肉マン』の消しゴム、通称「キンケシ」のトイカプセルが大ヒットした。ガンダムシリーズの売れ行きも良かったという。
次に1990年代にはそれまで単色だったものが複数の色彩の精巧な玩具が登場。ウルトラマンやディズニー関連商品などが人気となり、対象が大人にも広がった。さらに2012年にはコップのふちに女性の人形を置く「コップのフチ子」がSNSを通じて高い人気をなった。
今回はこれらに次ぐ「第4次ブーム」とされる。きっかけは2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大だ。商業施設の閉鎖などでテナントの撤退が相次ぎ、半ば仕方なしに無人で販売できるカプセルトイ自販機を置く動きが広がった。コロナ禍からの回復で利用者が拡大したところに、インバウンド客へ人気が広がっている。
玩具卸のハピネット（7552）が2024年4月にまとめた「カプセルトイの大人需要実態調査」によると、20代・30代女性の2人に1人が、大人になってからカプセルトイを購入したことがあるということが明らかになった。男性を含めた全年齢でも購入経験者は3割を超えている。購入するカプセルトイの1個あたりの平均単価は「400～700円未満」という中・高価格帯商品が伸びているという。
なお、東京証券取引所でも2024年4月からガチャガチャを始めている。東証マスコットキャラクターがデザインされた「あろーずくんキーホルダー」「あろーずくん缶バッジ」の他「相場格言マグネット」のカプセル自販機が設置されている。そこで、今回はカプセルトイに関連する銘柄をピックアップする。
子どもから大人まで人気拡大、市場を席捲するカプセルトイ関連銘柄4選
バンダイナムコホールディングス（7832）
玩具市場では首位級を誇り、バンダイナムコホールディングスでは「ガシャポン」ブランドとして展開している。幅広いラインナップのガシャポン自販機を揃えた「ガシャポンのデパート」も手掛ける。お菓子やコスメ、キャラクターなど取扱商品も豊富。第3四半期の決算説明資料ではアミューズメント事業について、「ガシャポンのデパート」などが好調で海外でも出店も進めているとしている。
ハピネット（7552）
玩具卸大手。カプセル玩具流通シェア約6割で首位。カプセルトイ専門店「gashacoco（ガシャココ）」を全国で105店舗を運営。2019年に立ち上げ、現在では約33万面のカプセル玩具自販機を設置している。第3四半期決算短信では「カプセル玩具市場がインバウンド需要も取り込み好調に推移している」などとしている。
イオンファンタジー（4343）
イオングループのモールを軸にアミューズメント施設を展開。カプセルトイ専門店「TOYS SPOT PALO」を全国展開。2024年2月期に新規出店76で、累計209店舗に。限定のオリジナルカプセルトイや、完全キャッシュレスのカプセルトイマシン「かぷえぼ」などを取り揃えている。
タカラトミー（7867）
玩具大手として知られる。子会社のタカラトミーアーツが「ガチャ」ブランドでカプセルトイを展開。第2四半期決算説明資料によると「ガシャ人気が継続、大人購買によるビジネス拡大」などとしている。北米に展開し、事業を拡大中。
