代表的なFRB(米連邦準備制度理事会)議長の1人にA.グリーンスパンがいます。彼は、名言の多い人としても知られていますが、そんな数多い彼の名言の代表は、1996年12月の「株高は根拠なき熱狂(irrational exuberance)なのか」でしょう。

ただ、「米ドルの番人」、「金融市場の守護神」といったFRB議長の警告に反し、株価はその後も上昇を続け、2000年に入ってからついに警告通りに暴落が始まると、それはITバブル崩壊と呼ばれました。

それにしても、警告から3年以上も後になってからのバブル崩壊の株暴落を、果たして「予言的中」と言って良いか。グリーンスパン本人もその辺の葛藤はあったのか、その後彼は以下のような新たな名言を残しました。

「バブルを事前に指摘することにあまり意味はない。何百、何千万人もの投資家の売買で決まった価格について間違っていると指摘することは重要ではない。バブルは破裂した後に、いかに対応するかが重要だ」。

私は、自分の仕事における重要な役割の1つが「異常値」を見つけることだと思っています。異常なことの継続性には自ずと限度があり、いずれ正常化に向かう。それはまさにバブルとバブル破裂・崩壊のプロセスです。

ただし、「異常」を確認したら、すぐに相場が逆に動くわけではない。「異常」がいつまで続き、いつから正常化に向かうかの見極めは非常に難しい。そう考えると、投資判断としてはグリーンスパンの言うように「バブル破裂後の対応が重要」となるでしょう。

それにしても、「バブル破裂後に正しく対応できるか」は、そもそもバブルであることを認識していることが前提になるでしょう。その意味では、やはり「バブル」、異常値を見つけることは、私の仕事において重要なことだとの思いに変わりありません。

その上で、「バブルを事前に認識することに意味はない。破裂後の対応が重要」といったグリーンスパンの言葉も理解すると「鬼に金棒」、今のNHK朝ドラのタイトルを引用するなら「虎に翼」となり、投資の世界で長くサバイバルするための秘訣ではないかと私は考えています。