父が入院。財産が不明の中、医療費や介護費用は払えるのか…?
皆さんは親の財産がどれくらいあるのか、把握できていますか?
私の父は2017年に悪性リンパ腫という血液のがんで倒れ、入院することになりました。岩手で暮らしていた父のもとへ私が東京から駆け付けると、父はICU(集中治療室)のベッドでたくさんの管につながれていました。
肺に水がたまって咳が出やすく、ほとんど会話ができなかった父。父の病状と同様に、金銭面の不安もありました。私には、父が自分の手術費や入院費を払えるのか、全く分からなかったからです。
今回は、そんな父の医療費や介護費用を捻出するために、私が行ったことについてご紹介します。
年金支給額や証券会社の取引残高報告書から父の財産を把握
父は岩手県盛岡市にある実家を出た後、同じ市内にマンションを購入していました。母とは30年近く別居していたので、父の財産は父しか分からない状態でした。
ICUに居た父との面会は制限されていたので、まず、金銭面等の状況と実態を把握するためにマンションの鍵を預かって部屋に入り、父の財産について調べ始めたのです。父のマンションには数回しか入ったことがなかったので、ほとんど手掛かりのないところからのスタートでした。
ゴミが山積する部屋の中から、まずは銀行の通帳とキャッシュカードを探したのですが、見当たりません。途方に暮れる中、床に落ちていた1枚の請求書を見つけました。中を確認すると、銀行の口座番号が書いてありました。おそらく父のメインバンクでしょう。
また年金支給額が記載されているハガキがあったので、そこから父の収入を把握しました。さらに証券会社の取引残高報告書が出てきて、保有銘柄と株数が記載されていました。
すぐにスマホで、現在の株価をチェック。かなりの含み益があったので、利益を確定すれば医療費は賄えると分かりホッとしたのですが、喜んだのも束の間、別の取引残高報告書が出てきて、株はすべて売却済だと判明しました。
結局、部屋を3日間捜索した結果、父の収入は年金のみ。保有する株式はなく、銀行の残高は数十万円、キャッシングで借り入れした履歴まで見つかりました。
父が話せる状態まで回復した後、私が調査した内容を確認すると、ほぼ当たっていました。結局父は医療費だけでなく、退院後の生活費や介護費用も払えないことが分かったのです。
お金を捻出するためリバースモーゲージや生活福祉資金貸付制度を検討
父の医療費や介護費用を、どうやって捻出したらいいのか?
私が立て替えてもよかったのですが、私の家族に迷惑をかけてしまうので、父の財産を担保にお金の借り入れができないかを調べ始めました。
最初に検討したのが、リバースモーゲージ。父のマンションを担保にして融資を受け、死亡時にマンションを売却して、一括返済する方法です。しかし2017年当時、盛岡市でリバースモーゲージを取り扱っていた金融機関はありませんでした。
次に生活福祉資金貸付制度を見つけ、社会福祉協議会へ問い合わせをしました。父のマンションを担保に低金利でお金を借りられないか聞いたところ、父は制度を利用できる世帯に該当しなかったので、借り入れは諦めました。
不動産業者に父が保有するマンションの簡易査定を依頼
そもそも33年前に父が購入したマンションは、どれくらいの価値があるのか?
不動産業者へ電話してみると、登記簿謄本を持参すれば、書類だけで簡易査定ができると言われました。早速査定をお願いしたところ、マンション購入金額の3分の1に満たない額にしかならなかったのです。
さらにマンションの管理費や修繕積立費、保有していた軽自動車の駐車場代など、合計で毎月5万円の支払いがあることが分かりました。
医療費の支払いや生活費だけでなく、マンションにかかるお金が毎月必要と分かり、私は頭を抱えました。まず父を説得して軽自動車を売却したのですが、売却価格は0円。毎月の駐車場代の支払いは2万円ほど減らせましたが、それでもお金の目途は立ちません。
いっそのこと愛着のあるマンションを売って、ワンルームの賃貸に引っ越したほうが管理費等の支払いはなくなるし、介護費用の捻出もできると思ったのですが、この時点で父は医師から余命3ヶ月と宣告されていました。
お金の問題は解決できるかもしれませんが、さすがに余命宣告された父に引っ越しのお願いはできませんでした。
医療費や介護費用、生活費などすべて立て替えることに
結局、私が入院中の医療費の支払いや退院後のマンションの維持費、介護費用、生活費すべてのお金を立て替えることになったのです。
父は3ヶ月後に亡くなりました。私が立て替えた総額は100万円を超えていましたが、父が亡くなった後にマンションを売却することで賄うことができました。
お金の立て替えがいつまで続くのか分からないのは、やはり不安なものです。私のように介護が始まってから慌てて親の財産を調べるのではなく、元気なうちから財産について、親子でぜひ話し合っていただければと思います。