◆私事で恐縮だが - 小欄はほとんど私事なのでわざわざ断ることもないのだが - 大学の後輩たちが偉業を成し遂げてくれた。全日本学生ボード セーリング選手権大学対抗戦(インカレ団体戦)で我が上智大学ウィンドサーフィン部は初の入賞を準優勝で飾ったのである。僕が現役だった30年前からは想 像もできない快挙だ。
◆自分が入ったころは、たいしたことのなかった組織が、その後大きな発展を遂げるということは、よくあることだ。反対に入った時は名門だったのに、その後没落してしまうことだってある。組織は変わる。飛躍も衰退も両方向あり得るのだ。
◆企業という組織の集合体が株式市場である。日本株式市場は、構成要素である上場企業が大きな変貌を遂げようとしていることを受けて高値追いが続 く。その変貌とは株主重視の経営に変わろうとしていることだ。ひと昔前、外国人が日本株を買わない理由でもっとも多かった答えが、「日本企業は株主のほう を向いていないから」というものであった。それが今や様変わりだ。自社株買いや増配で株主還元を拡大する企業が増えている。株主が出資した資本に対する利 益率(ROE)を経営目標として掲げる企業も広がっている。
◆おかげさまで当コラム「新潮流」も196回を数える。連載開始間もない第2回「新しい潮流」で僕はこんなことを書いていた。
<学生時代、帆走競技に明け暮れた僕からすれば、潮流というのは文字通り「潮の流れ」であって「波」ではない。潮流=ウエーブではなく、カレント (Current)である。波は果てれば崩れゆく。浜で割れるか、岸に当たって砕けるか。潮の流れは砕けない。ずっと流れていく。日本でようやく緒につい たばかりの、株主還元重視の潮目が、途切れることなくずっと続くことを願う。>
僕がいかに凡百の選手であったとはいえ、そこは腐ってもウィンドサーファー。風向きと潮の流れを読む勘だけは30年経っても鈍ってはいなかったと言えるだろう。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆