◆高市さんの「ワークライフバランスを捨てる」発言が波紋を広げている。首相になって真っ先に指示したのが現行の労働時間規制緩和の検討だ。これには批判も集中した。「過労死したひとの気持ちを考えろ」「働き方改革に逆行する」などの声があがっている。

◆僕などは長時間労働が嫌いな(よって、できない・しない)人間の最たるものである。会社勤めをしていた若い時分は、日が暮れてくると夜の街に繰り出したくて仕事が手につかなかった。席に座っていても生産性が上がらないので、とっとと退社することにしていた。仕事は朝から昼間にするもので、夜は遊びと割り切っていた。ワークライフバランスなんて言葉ができるずっと前からそれを実践していたわけである。

◆しかし、本来のワークライフバランスとはそういうものではないだろう。「ワーク=仕事」だとしても「ライフ=遊び」ではない。個人の時間を趣味に充てるのは余暇の過ごし方だが、リスキリングや勉強に真剣に取り組めば余暇とは言えない。業務外の時間で家事や育児、介護を担うひとにとっては、それはもうひとつの「ワーク=仕事」である。そのようなひとは仕事に公私の別があるだけで、ワーク・オンリーである。

◆ワークライフバランスにもいろいろあるように、個々人にとって最適な働き方も様々だ。これを機に働き方の議論が深まればよいと思う。そのうえで規制すべきところは規制が必要だが、原則は誰もが自由な働き方ができるような社会を目指すということだろう。

◆前段で「会社勤めをしていた若い時分」と書いたけど、今だってマネックスで働いている。会社勤めに変わりはない。ただ昔と違って9時5時でオフィスに通うことがないだけだ。その代わり、早朝や夜遅くのテレビ出演、土曜日曜のセミナー登壇、地方出張などがある。月曜の朝いちばんに配信する週間マーケット展望は日曜日に執筆する。夜は社会人大学院での講義で教壇に立つ。その合間に分析や研究をしてレポートや論文を書く。決まった時間に休むということがない。頭の中は24時間いつもマーケットのことを考えている。でもそれが僕の生活であり人生である。ワーク、イコール、ライフだが、「アンバランス」ですか?