2024年4月15日(月)21:30発表(日本時間)
米国 小売売上高
【1】結果:市場予想を上回る結果で、米個人消費の堅調さを示す
小売売上高(前月比)
結果:0.7% 予想0.4%
前回:0.9%(0.6%から上方修正)
自動車・同部品除く小売売上高(前月比)
結果:1.1% 予想0.6%
前回0.6%(0.3%から上方修正)
コア小売売上高(自動車、ガソリン、外食、建設資材除く小売売上高・前月比)
結果:1.1% 予想:0.4%
前回0.0%(0.3%から修正)
3月の米小売売上高は、前月比0.7%と市場予想の0.4%を上回り、2ヶ月連続で市場予想を上回りました(図表1)。また、コア小売売上高も1.1%と市場予想、前回結果ともに大幅に上回り、改めて米国の個人消費の堅調さが示される結果となりました。
【2】内容・注目点: インフレ圧力が消費者の消費選択に影響か
米国では、個人消費がGDPの約7割を占めることから、その動向を確認できる小売売上高に注目が集まります。また、雇用環境が堅調である中、長引くインフレが家計にどれだけ影響を与えているのか懸念されていたため、特に今回の小売売上高の結果は重要でした。
結果は市場予想を上回る強い結果となり、個人消費は依然として旺盛であることが示されました。小売売上高(前月比)数値(+0.7%)には、インフレ上昇分は加味されていませんが、3月の米消費者物価指数(CPI)(前月比)の数値が+0.4%であったことを考慮すると、インフレ上昇分以上に個人消費が旺盛であったことが分かります。
また、自動車は販売店のセールなどの影響で月ごとに大きく販売量が変わるため、それを除いた数値に注目が集まりますが、その数値も市場予想を上回りました。
その他、季節変動の大きい自動車、ガソリン、外食、建設資材除いたコア小売売上高(通称「コントロール・グループ」)も、市場予想を大きく上振れし米個人消費が基調的に旺盛であることが示されました。
項目別では、3月は13項目のうち8項目で増加しました。内訳をみると、無店舗小売が+2.7%で、伸びが最も大きく目立ちます。続いて、原油価格の上昇を背景に、ガソリンスタンドが+2.1%と増加しました。その他、食料品やヘルスケアも前月比プラスとなりました。
一方で、下落となったのは家具・家電、自動車・部品、衣服、スポーツ用品等趣味でした。食料品やガソリン、ヘルスケアなど生活必需品の支出が増えている一方で、趣味関連や自動車など嗜好品といえるような商品の消費を控えている傾向であることから、長引くインフレが消費者の消費選択に影響を与えていることが見てとれます。
先日公表された3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、クレジットカード残高の増加や"buy-now-pay-later"プログラムの利用拡大、消費者ローンの延滞率の上昇といった指標から一部の低・中所得世帯の家計が圧迫されているといった指摘が出ています。米個人消費は3月こそ好調ではありましたが、今後の消費動向については注意が必要です。
【3】所感:米景気は好調、月末のPCEに注目
指標発表後市場の反応は、結果が市場予想を上振れたことで、早期利下げ観測が後退し米金利は上昇しました。米金利が上昇し日米の金利差が拡大したことから為替は米ドル高・円安方向に動き、1米ドル154円を突破しました。株式市場も、寄りこそ堅調であったものの、金利上昇の重しと中東情勢の不安から全面安となりました。
一般的に高インフレではない平時では、小売売上高が堅調であることは米経済が強い証拠となり米ドル買い・株高の要因になりますが、現在はインフレの再燃が懸念されている状況であることから、小売売上高が強すぎると堅調な消費(需要)がかえってインフレを加速させるとの思惑から金利上昇→株安となることがあります。
とはいえ、消費が強いことは基本的に米経済にとっては良いことです。今後インフレの動向がどうなるのか、といった視点が金融政策の行方を見通すにあたって重要となります。4月26日には、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として採用している米個人消費支出(PCE)が発表されます。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐