2024年4月11日(木)21:30発表(日本時間)
米国 生産者物価指数(PPI)

【1】結果:総合・コアPPIいずれも前月比ベースで予想と前回結果を下回る

【図表1】米生産者物価指数PPI(最終需要)結果まとめ
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

3月の米生産者物価指数(PPI)は、前年比2.1%と前回結果の1.6%を上回ったものの市場予想の2.2%は下回る結果となりました。また、物価動向の風向きを確認できる前月比ベースでは0.2%と前月の0.6%から低下し物価の伸びの速度に低下が見られます。

変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIは前年同月比で2.4%となり、市場予想と前回結果ともに上回りました。一方で、前月比ベースでは0.2%と市場予想通りの結果となり、前回2月の0.3%からは低下しました。

【2】内容・注目点:米 PPIは米CPIの行く末を占う先行指標か?3月結果はインフレペースの鈍化を示す

4月10日の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る結果を示したことでインフレ再燃懸念と早期利下げ観測が後退していたため、米PPIの結果に注目が集まりました。

そもそも米PPIとは、生産者物価指数のことを指し、原材料や製品を対象として生産段階での財・サービス価格変動を測定しています。

例えば、机などの家具で考えると、企業が机という商品を生産するために仕入れる木材や金属などの原材料の価格変動を測定するのがPPIであるのに対し、CPIは最終的に消費者が机を購入する際の価格変動を測定します。

必ずしもそうとは限らないものの、一般的に、企業が仕入れる原材料の価格変動が最終的には消費者が支払う価格に反映されることが多いため、米PPIは米CPIの先行指標(図表2)として注目されています。

【図表2】米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)の推移(それぞれ前年比)
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

また、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視しているコアPCE価格指数の内訳で大きな比重を占める医療サービスの約半分は病院サービス価格となっていますが、この病院サービス価格は米PPIに基づいて計算されているため、4月末のPCEの結果を占う上でも、米PPIに注目が集まっていました。

そこで、今回の米PPIの内訳(前月比)をみると、サービス価格は前月比+0.28%と、前回の+0.3%とあまり変わらずも上昇が続いています。

中身を見ると、航空運賃(+2.2%)や投資関連サービス(+3.1%)の上昇が目立つ一方で、ホテルなどの宿泊料金は-3.8%と下落し、PCEに関わるヘルスケアサービスは-0.02%で落ち着いています(図表3)。

【図表3】米生産者物価指数(PPI)最終需要前月比の内訳
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

また、エネルギー価格は-1.6%で前月+4.1%の上昇から下落に転じました。ガソリン価格の低下(季節調整後:-3.6%)によるものです。しかし、ガソリン価格は季節調整前では+6.3%の上昇となることから、一部のメディアでは、季節調整が不自然であると囁かれています。

一方で、財価格は-0.1%と下落に転じており、総合結果としては、サービスのインフレを財の価格低下が抑える形となりました。

【3】所感:予想下振れにひと安心、早期利下げの道筋はいかに

米PPIが4月10日発表の米CPIほど強い内容ではなかったことから、過度なインフレ警戒が和らぎ、9月まで後退していた利下げ開始時期予想は、7月まで再び前進しています。これを受け、株式市場ではハイテク株を中心に買い戻しが入り、NASDAQは史上最高値を更新しました。

米PPIは、米CPIの先行指標となることから、今回前月比ベースの伸び率が低下したことは、インフレ鈍化の見通しとしては好材料になるとみて良いでしょう。

とはいえ、一時的なデータのみでは判断できず、早期利下げが実行されるかどうかは、FRBが政策の判断基準として重視しているPCEの結果をみることが重要です。

また、4月15日には、米国小売売上高が公表されます。インフレと強い雇用に対し、個人消費の動向はどうなっているのか注目したいところです。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐