先週の動き:新規資金の流入続きニューヨーク金先物価格2,350ドル到達、国内価格も連日の最高値更新

先週の当コラムのタイトルを「『もうはまだなり』NY金空前のモメンタム相場で2,300ドル突破へ」としたが、先週のニューヨーク金先物価格(NY金)は、まさにその通りの展開となった。

4月5日の通常取引終値は前日比36.90ドル高の2,345.40ドルで終了。史上最高値を更新した。終値ベースで3月以降14回目の高値更新となった。通常取引終了後の時間外取引では、やはり高値更新となり、一時2,350.00ドルまで買われ、2,349.10ドルで週末の取引を終了した。ほぼ高値引けの状態で、テクニカル上は上昇相場のモメンタム(勢い)の強さを表すものといえるが、先週は4月2日、3日にも同様の値動きが見られており、5営業日中3営業日で現れた。なお、取引時間中の史上最高値更新は、4月5日で6営業日連続となった。週足は前週末比107.00ドル、4.78%の大幅続伸となった。先週は「見通し」について、「これまで本格参戦していなかった欧米勢の資金流入が急拡大という点で、上振れを含む波乱相場に要注意といえる」と書いたが、その通りの価格展開となっている。

ここまで一連の上昇相場については、金市場にありがちな世の耳目を集める特定の事件や事故に反応して急騰する、いわばイベント型の上昇相場ではないことから、過熱との指摘がある一方で、意外性のある水準切り上げが続いている。買いの主体は引き続き、目先の値動きに乗じて利益を上げようとする短期投機筋(CTA=商品投資顧問)だ。そこにファミリー・オフィスと呼ばれる超富裕層(high net worth)の資産管理ファンドや国家ファンド(SWF)なども加わっているとみられる。

大きく水準を切り上げたNY金の先週のレンジは2,249.10~2,350.00ドルとなったが、想定レンジとした2,250~2,330ドルにほぼ沿った形となった。私自身も、やや強気すぎるかと思ったが、いわゆる「理外の理」という観点から足元の相場展開に沿って書いたものだった。

一方、国内大阪取引所の金先物価格国内金価格だが、こちらも史上最高値更新が続いた。米ドル円相場が円安方向に動こうとするものの介入警戒も強く、151円台後半でのこう着状態となったことで、NY金の上昇をそのまま映し出すことになった。国内金価格の週足は前週末比120円、1.09%高となり、7週連続の上昇となる。レンジは1万878~1万1224円となったが、1万900~1万1300円とした想定レンジにほぼ沿った形になった。10%の消費税込みで表示される現物の店頭小売価格も1万2300円台まで上昇し、これも史上最高値を更新している。

ファンド新規買いの背景

買いの基本シナリオは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの政策転換に変わりはない。一般にFRBによる年内の利下げ回数が3回か2回かなどと見通しが揺れるごとに、ここまでNY金も上下動を繰り返してきた。しかし、すでに市場の利下げ期待値が低下することでFRBの見通しと一致し、あるいは状況によっては市場の方がタカ派的な見方をする状況まで生まれており、もはや利下げ回数(=今後の利下げ幅)の材料性は低下していると言える。利下げ転換という基本シナリオが崩れない限り、今後調整局面はあるものの、NY金の基本的な底堅さは続くものとみられる。

先週はイスラエルがシリア首都ダマスカスにあるイラン大使館を空爆し、イラン軍司令官らが死傷するというニュースがあった。イスラエルによるシリア国内への攻撃はこれまで見られたものの、イラン大使館が標的になったのは初めてのことである。イランが報復を示唆したことから、今後の緊張の高まりに警戒感が強まっている。中東での軍事紛争の拡大懸念という地政学リスクの高まりが、ゴールドの買い要因として高まったことも押し上げ要因となった。

3月米雇用統計の上振れで急騰したNY金

注目された3月の米雇用統計の結果(4月5日発表)に対する金市場の反応については、意外性があったとする見方がほとんどだ。しかし、上記のような市場の捉え方からすると、発表を受け水準を切り上げたことは理解しやすいだろう。

米3月雇用統計では、注目度が高い非農業部門就業者数は前月比30万3000人増と市場予想の20万人増を大きく上振れした。失業率も前回の3.9%から3.8%に低下。FRBの利下げ転換は後ずれするとの観測が強まった。実際に米10年債利回りは2023年11月28日以来約4ヶ月ぶりの高水準となる4.4%台で終了した。

一方、インフレとの関連で注目されるのは賃金上昇率だ。3月は伸びが鈍化したことが予想されたが、平均時給は前月比0.3%の上昇だった。これは市場予想と同じで、さらに前年同月比も4.1%の上昇と予想と並んだ。前月の4.3%から低下し、2021年6月以来の低水準だ。つまり、雇用者数の大幅増加にもかかわらず、サービス価格の上昇につながる人件費の伸びは鈍化傾向が続いているのだ。雇用は堅調ではあるものの、賃金インフレは低下傾向だ。この点でFRBの年内利下げシナリオに変更はないとの読みにつながり、NY金は大きく水準を切り上げた。

今週の見通し:4月10日の米3月の消費者物価指数(CPI)、11日の同生産者物価指数(PPI)に注目 想定レンジはニューヨーク金先物価格2,320~2,390ドル、国内金価格1万1120~1万1650円

今週も注目指標の発表が予定されている。4月10日の米3月の消費者物価指数(CPI)、11日の同生産者物価指数(PPI)が言うまでもなく注目指標となる。CPIについては、総合指数、コア指数ともにやや鈍化が予想されており、予想通りならば金市場にはサポート要因となる。また、4月10日には3月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の発表がある。その後の指標の発表で金利見通しを変えているFRB高官もいると見られ、僅差で2024年3回利下げとなったものの、その内容が注目される。ただし、前述したように利下げ回数の材料性は後退している。株式市場や為替など他の市場を見る参考値となる。

こうした中で想定レンジはNY金が2,320.00~2,390ドル、国内金価格は1万1120~1万1650円を想定している。NY金の怒涛のモメンタム相場に目先の転機が到来する可能性もありそうだ。

【図表】金 縦軸:円建て金/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券