オルタナティブ運用は伝統的資産とは異なる値動きが期待され、また一般的には長い年数投資が必要で、流動性を犠牲にすることでリターンの機会を得る等、分散投資の対象としての魅力がありますが、まだ個人投資家には身近な存在にはなっていません。
先日資金循環統計が公表されましたが、日本の家計は引き続き過半が現金・預金です。ようやく脱デフレの機運が高まる中で、また新NISAの始動と共に株式市場が堅調であることから、資産運用に対する注目度も増していくと期待されますが、短期的には株式市場以外への注目度はまだ高まりにくい状況でもあります。ただし大手日系運用会社が投資機会の提供に乗り出すなど、市場拡大と共に資産運用への組み入れを検討できる時が迫ってきています。
先日GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が「低流動性資産等に関する情報提供依頼」を公表し、長期目線での資産運用において運用の多様化・高度化・サステナビリティを重視すべく調査研究に乗り出しています。対象となる資産は幅広く、インフラストラクチャー、不動産、プライベートエクイティから森林、暗号資産に至っています。なお、現在GPIFではオルタナティブ投資を資産全体の5%を上限としていますが、今後は調査研究の進捗と共にその投資割合も海外投資家同様に拡大していくのではないでしょうか。
個人的にも最近音楽著作権への投資について話を聞く機会がありました。ストリーミングサービスの拡大とともに音楽を聴く機会は広まっており、また映画等各種イベントを通じて流行が作られ、最新の曲だけでなくかつての流行曲の掘り起こしなどバリューアップによって音楽の著作権もビジネスになっています。
技術進歩によって様々なサービスが身近になっていますが、これは投資の世界でも同様です。投資機会も多様化してきており、その投資手法や対象も多岐にわたるなかで、技術進歩の速度同様に投資機会が身近となる日も近いと思われますが、非伝統的運用手段については特に内容を吟味することがより重要である点は注意したいです。
長い運用期間においては様々な選択肢がある方がもちろん良いです。短期的にリターンの見える市場性証券とともに中長期的な資産形成に資する商品の早い普及を期待したいです。