◆寒い日が続く。先週金曜は東京でも雪が舞ったが、明日もまた全国的に雪の予報が出ている。今日は立春。暦の上では春が立つ日だが、実際には一年のうちで今頃が最も寒い。最低気温が摂氏0度未満になる日を冬日という(夏日は最高気温が25度以上になる日である)。実は冬日は年を追うごとに減っている。地球温暖化、都市のヒートアイランド現象が叫ばれて久しいが、真夏日や熱帯夜の増加より、冬日の減少のほうが顕著であるのだ。
◆それにもかかわらず、毎日寒いなあと思うのは、年初から暗いニュースが続き、気持ちが塞いでいるせいか。寒い時期だからこそ、心身ともに暖かくなるように自ら努めるべきなのだろう。
食べること飲むことそして歩くこと 冬陽のように人を恋うこと (三枝昂之)
「冬日」は寒い日のことだが、「冬陽」という言葉は陽だまりの温もりを感じさせる。
◆大寒翌日の小欄、第157回「寒造り」では国債利回りの異常な低さを取り上げ、こう述べた。「金利低下に拍車をかける材料には事欠かず、金利の底は一向に見えない。しかし、ものごとには道理があり、自然には摂理がある。冬が過ぎればやがて暖かくなるように、いつまでも、金利の低下が未来永劫続くものではない。いずれ底打ち上昇に転じるだろう」
◆昨日の国債市場は、10年債入札の不調から国債が売られ金利が急上昇した。それを受けて円高・株安となった。相場のトレンドというものは、いつかは変わる。今まさに潮目が変わりつつあるような、そんな兆しが感じられる。雪の下に芽吹いた蕗の薹が顔を出すように。厳寒のなかに桃の花が膨らみを増すように。一年で最も寒い時期に「春が立つ」のは、もうこれ以上寒くならないからである。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆