シン・ニホンに期待、2024年末に日経平均は5万円を目指すか

マネックス証券 ファウンダー 松本 大

日経平均4万円突破のコメントを頼まれたが、全く用意してなかった。
日経平均が2月22日に史上最高値を付けたことには意味があり、その時私は、
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これからの高値は、34年ぶりの高値ではなく、「新高値」です。
過去を振り返って過去を取り戻すのではなく、これからの日本は、前を見て新しい成長を創っていくべきです。
そんなシン・ニホンに大きく期待します。
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というコメントを発表したが、その中に書いた通りで、4万円は当たり前の通過点、次は5万円になった時にコメントを出そうかと思っていたからである。

今、日本で変化が起きている。一部のスーパースターによる改革ではなく、リーダー層の世代交代という、全国的に広くそして後戻りがない形で変化が起きている。

昭和の「日本の奇跡的成功体験」を知らない世代が、普通に世界標準の経営や、資本市場の中での正しい行動を起こそうとしている。その変化に対する期待が、株価を押し上げる大きな要因となっている。

だからこそ、日本の株価はこれから波を伴いながらも、米国株のように緩やかに上昇を続けるだろう。かつての日本株のように、上下の波を伴いながら横這いを続けることは、もうないだろう…ちゃんと変化に対する前向きな姿勢を持ち続けるならば。

2024年末、日本企業・経営者たち・東証・社会に、変化を続ける意欲が継続していれば、日経平均は5万円を目指していっても不思議はない。

しかしもし、現状に甘んじて、まだ変化を起こせていないのに変化を起こした気持ちになってしまい、変化する意欲を失ったら、株価は3万円台前半に戻ってしまうかも知れない。
そうならないシン・ニホンに、期待したい。

2024年3月4日
松本大

【今後のメインシナリオ】日経平均4万円台定着を図り、4月下旬から5月にかけて一段上のレンジに移行する展開

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

日経平均が4万円を超えた。
特段の驚きはない。
従前から予想していたことだからである。

そういうと、冷めたコメントのように響くがそうではない。
非常に意義のある、大きな出来事だととらえている。
日経平均が2週間ほど前に史上最高値を更新した際にも一部には「意味がない」などという冷めたコメントがあったがそんなことはない。

日本株相場が過去のバブル崩壊のツケを一掃して、新たな未踏の領域に進んだのだ。
確かにシンボリックな意味が大きいが、人間はそうした節目を大切にする生き物である。
素直に日経平均4万円を喜びたい。

問題はこの先だ。無論、4万円は通過点に過ぎず、この先も更なる上値が期待できる。しかし、上昇のピッチが速すぎる。そこで問題になるのが、バリュエーションだ。先週末時点の日経平均の予想PERは16.8倍、そこから逆算して予想EPSを求めると2,375円だ。本稿執筆時点で日経平均の高値は本日(3月4日)9:54につけた4万301円。予想PERは16.96倍、四捨五入すると17倍。さすがに割高感がある。期間のとりかたにもよるが、日経平均のPERは変動が大きいため、これでも過去平均に対して1倍強高いだけなので許容範囲ではあるが、よりコンサーバティブなデータでみると、やはり高すぎるように感じる。

よって目先はここで一服感が出ても不思議はないが、相場とは往々にして理屈度外視で行き過ぎるものだ。よってさらに上伸して4万1000円、2000円と高値追いとなる可能性も捨てきれないが、このタイミングでは正当化は難しい。

メインシナリオとしては、今後は4万円台定着を図りながら、3月本決算の発表が本格化する4月下旬から5月にかけて、一段上のレンジに移行する展開を想定する。

日経平均、2025年末に5万5千円に

イェスパー・コール マネックスグループ株式会社 グローバル・アンバサダー

日経平均が4万円を突破した今、2025年末までに「5万5千円」に達する準備が整っていると考える。日本の企業経営者たちは「ついに」行動を起こし、将来の成長に向けて投資を始めている。日本企業がMBO、M&A、成長投資を実行すればするほど、世界の投資家からの日本への資金流入も大きくなるだろう。GO!GO!JAPAN!

重要なのは、日本企業は高い収益を生み出す上で非常に良い立場にあるということだ。これは、数十年にわたる「カイゼン」によるリストラによって、運営上の損益分岐点が低下したため。ウォーレン・バフェット氏は、日本企業がいかに効率的でよく管理されているかに常に感銘を受けている。

事実として、日本企業の売上高の伸びは20年以上基本的に横ばいであるにもかかわらず、1994年以来EPSは10 倍以上に成長している。米国の上場企業は1994年以来、EPSは6倍に成長し、売上高は3倍(1994年以来)伸びている。

したがって、真の経済資本の成長という点では、日本企業は最高である。もちろん、代表的な米国企業の優秀な経営者は、PERやその他の倍率を引き上げることによって株価を上昇させることにも引き続き力を入れていくだろう。株価純資産倍率を上げるという東証の取り組みを考慮すると、日本には米国に追いつき、ファンダメンタルズと株価の倍率を高める十分な余地が残されていると考える。

日本にとっての最大のリスクは、中国による通貨戦争の可能性だ。プラザ合意の時のように、中国政府は中国主導の通貨切り下げの実施を余儀なくされるだろう。そのときに日本企業は大きな打撃を受けるだろう。中国製の自動車、工作機械、ロボットなどとの競争はすでに激化しており、中国通貨安は日本製にとって潜在的に大きなマイナスとなるだろう。

外国人投資家のマネーに流入余地

経済評論家 杉村 富生 氏

日経平均株価が、かつての史上最高値である3万8,915円を付けた1989年12月当時、EPS(1株当たり利益)は約640円だった。34年ぶりに高値を更新した2024年2月時点では2,370円と4倍近くに拡大した。一方で、両時点で比べると、PER(株価収益率)は61倍から16倍に、PBR(株価純資産倍率)は5.7倍から1.5倍に縮小した。つまり、企業の稼ぐ力は4倍に増えたが、株式の人気や需給を示す「バリュエーション」は4分の1に縮小した結果、株価は差し引きゼロに戻ったということ。

ここまでバリュエーションが縮小したのは、34年間で政府も経営者も委縮して、積極的な資本政策を取ってこなかったことが原因だ。しかし、ここ数年で劇的な意識変化が起き、自社株買い、資産の入れ替え、持ち合い・親子上場の解消など、資本効率を高める動きが活発化している。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の4000億円規模の自社株買い、三菱商事(8058)のグループ会社・日本KFCホールディングス(9873)の売却報道、日立製作所(6501)の上場グループ会社再編などが代表例だろう。

日本企業の資本効率化には外国人の機関投資家も注目しており、2023年初頭以来、7兆円を買い越した。しかし、小泉改革やアベノミクスの初期(2013~2015年)の買い越し額には及ばない。ウェルスソブリンファンドやマネーの流入余地はまだあるのではないか。インフレで資産形成の重要性に目覚めた個人投資家からの資金流入も期待できる。

製造業では、米中対立に端を発してサプライチェーンの再構築の必要性が高まっており、国内回帰が進む。半導体銘柄はこの点で追い風が吹いている。インバウンド需要で百貨店銘柄も好調だ。日経平均のEPSが2,550円程度(来期ベース)に押し上げられ、EPSが現状16倍を保てば年内に4万3,000円に達する可能性は十分にある。

注目銘柄は銀行、保険、リース 

経済ジャーナリスト 和島 英樹 氏

日経平均株価が節目の4万円を突破したことは感慨深い。ただ、PER面などで依然として割高感はない。次はもう一つの主要指数であるTOPIX(東証株価指数)が1989年12月18日に付けた2,884ポイント突破の時期が焦点となる。これを達成して初めて、日本株が本当にバブルを克服したことになる。

日経平均が1989年末の最高値を突破した2024年2月22日の日経平均のEPS(1株当たり純利益)は2,374円。2025年3月期に企業業績が10%増益とすれば2,611円となる。同様に2月22日の日経平均のPERは16.4倍。単純にこの数値を当てはめれば2,611×16.4=4万2,820円となり、これが年内の目標株価になる。

今後の注目テーマはデフレ脱却で資金需要が増加する銀行や、金利上昇により運用成績の向上が見込める保険、ノンバンク、リースなどが挙げられる。東京証券取引所が要請する低PBR(ROE)改善策の観点でみると、低PBRで利回りの比較的高い鉄鋼、総合化学の一角、2番手以降の自動車株なども有望といえる。生成AIや半導体関連は調整を交えつつも強い基調が続くと考えている。

高値更新が期待されるTOPIXは、時価総額が大きくて流動性の高い銘柄の比重が高いという特長がある。これまでも、その中心であるTOPIX Core30に採用されているメガバンクや大手商社、電機、通信株などに外国人投資家の買いがみられている。指数の高値更新には、Core30に次ぐTOPIX Large70、さらにTOPIX Mid400などへ物色が波及することが必要だろう。

PBRの急速拡大が株価押し上げ 

株式アナリスト 鈴木 一之 氏

株価はPBR(株価純資産倍率=株価/1株当たり純資産)×BPS(1株当たり純資産)ではじき出される。筆者は2023年末時点で、2024年の日経平均見通しを36,500円と考えていた。

その根拠として第1に日経平均のPBRは、2023年前半の1.10~1.20倍から切り上がり、同年後半に1.30~1.35倍のレンジで推移していたことがある。第2に、最近10年ほどは、日経平均のBPSが、年間で1,500円ずつ切り上がっていたことだ。そのトレンドを延長して、日経平均のBPSは2024年末に27,200円くらいになると予想した。1.35×27,200で36,500円という数字を出していたのである。

実際には、2月末ではBPSは26,100円に達していたが、これは巡航速度だ。しかし、PBRが急速に拡大し、1.50倍に達したのだ。この結果、理論的には39,000円を超える素地はできていた。PBRの急速な拡大は、景気動向が急速に上向いているか、海外勢と思われる投資家の日本株に対する評価が急に強気に傾いていることを意味している。

では、年末に向かって日経平均はどのような値動きをするのだろうか。まず、BPSは2024年末には27,200円に切り上がることが前提だ。PBRが1.50倍に高止まりしたままならば、日経平均は40,000~41,000円に達する。

PBRが1.50倍を保つ条件は、東証市場改革が実り、企業が事業構造の改革を力強く前進させ、利益率を高めることである。1ドル=150円前後の円安が維持され、企業業績が3期連続で史上最高益を更新する見通しが維持されることも重要だ。賃上げが広い業種・階層で浸透して、個人消費が物価の上昇に負けないレベルに維持されること、個人マネーがNISAを経由して日本の株式市場にも還流することも必須だ。

以上の条件のいくつかが未達成になるようであれば、日経平均のPBRは1.30~1.40倍にダウンしかねない。BPSが想定通り27,200円まで切り上がったとしても、PBRが1.40倍台であれば、日経平均は38,000円台にとどまることになる。

企業は改革の手を緩めてはならないし、投資家は常時、株式市場のチェックを怠るわけにはいかないだろう。

最後に、注目セクターにも触れたい。日経平均が史上最高値を更新した2月22日までの年初来上昇率が低かったセクターは情報通信・サービス(+7.3%)、食品(+6.5%)、運輸・物流(+5.5%)、素材・化学(+5.0%)、電力・ガス(+4.2%)などだ。上場企業の事業構造改革が実るのであれば、上昇率下位のセクターからも株価水準が大きく変化する銘柄が現れるものと期待される。中でも産業の基礎中の基礎素材を供給する「化学セクター」、IT系ソフトウェアの「情報通信・サービス」には大いに注目している。