株はただ買って持ち続けるに限る

S&P500が取引時間中に5,000ポイントの大台を初めてつけた。その瞬間、僕は六本木のテレビ東京のスタジオにいた。ニュースモーニングサテライトに出演していたのである。

「広木さん、S&P500が5,000ポイントをつけましたね!」コメントを求められて、僕はこう言った。
「株は上がるものなのです」と。

これまで何度も述べてきたことだ。2月21日に発売になる僕の新刊『利回り5%配当生活』(かんき出版)の「はじめに」でも書いた。「株は上がるものなのです」と。

 

(広木隆著 『利回り5%配当生活』 かんき出版)
 

もちろん下がることもある。それも急落や大暴落だって頻繁に起きる。しかし、その下げを乗り越えて再び高値をとってくる。株とはそういうものだ。

下がる前に売って、下がったところを買い直す ‐ そんな芸当ができれば、とんでもないパフォーマンスになるだろう。しかし、そんな芸当は誰にもできやしない。2、3回くらいはできるかもしれない。しかし、それは「まぐれ」であって、再現性はない。

だからフツーのひとはどうするか。ただ株を買って持ち続けるに限る。よほどのことがない限り、売ってはいけない。よほどのこととは、強烈なバブル、どうみてもオーバーシュート、行き過ぎという場面だ。ただ、バブルとは弾けてみて初めてバブルだったと分かる ‐ と誰かが言った通り、あとにならないと分からないものだ。バブルのピークで売り抜けるなんてことは、まずフツーのひとには不可能である。

だから株は売れないし、それでいい。下がったとしても、いずれまた上がってくるのだから。とにかく、株は売ってはいけないし、マーケットタイミングを当てるのは至難の業だ。

ここでひとつ重要な注意を。以上は「株式市場全体」の話であって、個別株はその限りではない。個別株はダメになったら最悪、紙くずになるリスクもあるので、損切りは必要。「見切り千両」である。

GDPが成長し、インフレがある経済なら株価も高くなる

株式市場全体としては上がり続けるというのは考えてみれば当たり前だ。GDPが成長し、インフレがある経済なら株価も高くなる。龍角散のCMではないが、「理屈じゃねえんだよ」なのである。

いや、理屈はあるが、くどくど説明するまでもないだろう。GDPというのはその国の経済活動が創り出す付加価値の合計で、当然、企業の収益と関係がある。そしてインフレは名目の値を増やす。企業の売上高も利益も名目値だからインフレになれば、その分だけ増える。株価も名目値だからインフレだけで株価は上がる。経済が破綻しているアルゼンチンでさえ株価は急騰している。ハイパーインフレだからである。その株価のリターンでインフレをヘッジできるか、つまり実質リターンがどうかはまた別問題だ。ただ、少なくとも名目の株価は上がっている。

34年ぶりの高値とか言っている時点で日本株はすでに異例だが、それだけ日本の1980年代末期のバブルがけた違いに酷かったということである。それでもこの10年、日本株も右肩上がりで米国株とそん色のないパフォーマンスだ。今日、9日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、節目の3万7000円を上回った。日経平均が取引時間中に3万7000円をつけるのは、1990年2月20日以来34年ぶり。前日比の上げ幅は一時400円を超え、3万7287円まで上げる場面があった。

さあ、いよいよ史上最高値更新が見えてきた。

日経平均が4万円になるタイミング

2月8日の米株式市場ではダウ平均が3日続伸し、連日で過去最高値を更新した。S&P500の5,000ポイントに続き、次はダウ平均が4万ドルをつけるだろう。日経平均もその後を追って4万円になる。

1月12日付のストラテジーレポート『日経平均3万5000円について 4万円予想のアップデート』で述べた通り、日経平均の予想EPS 2,500をPER16倍で評価すれば4万円だ。PERのほうはすでに16倍に達している。あとはEPSが上昇すればよい。昨日2月8日時点でEPSは2,300円を超えてきた。3月の本決算ではもう少し上振れして着地するだろう。それを基準に来期の業績見通しは一桁台の伸びでいい。5~6%程度の増益見通しがコンセンサスになるだけでEPSは2,500円だ。決算発表が一巡するころには、来期EPS見通しが「当期予想EPS」に振り替わる。そのころには日経平均は史上最高値を超えているだろう。

決算発表が一巡するのは5月半ば。ちょうど Sell in May のタイミング、つまり売り時である。史上最高値更新で一旦、利益を確定し、夏枯れ相場はバカンスにでもいって模様眺め、秋の訪れとともに再び安値で買い直すのがよいだろう。毎年、9月~10月は株安のシーズンだ。特に今年は米国大統領選の不透明感もある。あれ?株は売ってはいけない、マーケットタイミングを当てるのは至難の業なのでは?まあ、細かいことは、この際、忘れて、S&P500の5,000ポイントを祝おう。