株式投資をスタートして5年目で資産1億万円を突破し、現在2億円以上を運用しているkenmoさん。前編では、投資手法の改良を重ね、「順バリ決算モメンタム投資」にたどり着いた経緯や決算の読み方などをお聞きしました。後編では、さらに進化した手法や、最新のポートフォリオについてお届けします。
企業の変化に合わせたトレードにシフト
――「順バリ決算モメンタム投資」手法は今後も継続されるご予定でしょうか?
2020年から2022年は世の中の変化が大きかったので、決算を起点とした値上がり益を狙う手法が機能していました。しかし、2023年8月の決算ではこの手法がうまくいかなかったのです。決算トレードをする人が多くなったため、決算で上がっても買う人が出てこなくなったからです。そこで、トレード手法を少し変えることにしました。
例えば、現在、私はパリミキホールディングス(7455)の株式を保有しています。同社は、格安メガネの台頭により業績が低迷していました。その後、店舗改革が功を奏し、業績が回復しています。同社は月次売上データを開示しているので、その結果を反映した決算の上方修正の発表を見て、個人投資家の多くは株式を売却しています。しかし、その後も同社の株価が上がっていることを考えると、個人投資家が売却した株式を機関投資家が買っているように見えました。
個人投資家が、決算の良し悪しや月次の結果で投資判断をしているなか、機関投資家は2年後、3年後といった長めの期間で企業の展開を見ているのではないでしょうか。そういった気づきもあり、現在は、短期的に決算を見てトレードするのではなく、企業の変化に応じた少し長めの時間軸のトレードにシフトしています。
「円高メリット」「新しいNISAで上昇期待」の銘柄に注力
――最新のポートフォリオを教えてください。
2023年11月のタイミングで、円安恩恵銘柄を売却して、円高恩恵・内需割安成長株に大きくシフトしました。2024年は日米金利差が縮小して円高が進むと考えています。加えて、中国の景気が悪化しており、米国の景気も陰りが見られます。そのため、輸出関連銘柄はすべて売却しました。
一方で、円安の恩恵を受けず、割安な銘柄が多いのも事実です。そういった状況下で、2024年から新しいNISAが始まるので、新規参入する個人投資家にとって分かりやすい小型成長株にポートフォリオを寄せることにしました。具体的には、小売業やサービス業で株式優待があり、かつ配当がある銘柄などです。
――状況に応じて投資手法を改良するコツはありますか?
試行錯誤して改善しながらも、基本的な戦略として相場の流れにのった“トレンドフォロー”であることに変わりありません。2023年の春から秋にかけて、高配当株や円安恩恵株がトレンドを形成していましたが、そのトレンドも今、大きく変化しています。相場が上がり始めたら買い、下がり始めたら売却するのが基本戦略です。どのような時間軸やテーマでトレンドが起きているのかによって、短期トレードが良いか、中長期的に保有するのが良いのかは異なります。しかし時間軸に違いはあれど、トレンドフォローを常に意識することには変わりありません。
■失敗パターンを頭に叩き込み、「退場しないこと」を大前提に
――投資をどのように勉強しましたか? 参考になった書籍などがあれば教えてください。
株式投資をやるからには、絶対に失敗したくないと思いました。そのため、まずは書店に行って片っ端から投資に関する書籍を読み漁りました。参考になったのは、林則之さんの『伝説のファンドマネージャーが教える株の公式』(ダイヤモンド社)と、ウィリアム・オニールさんの『オニールの成長株発掘法』(パンローリング)です。これらの書籍を読んで効率的だと思って投資初期の頃に実践したのが、株価が上がった銘柄をより上がったタイミングで売る「新高値ブレイク投資」です。
また、株式投資に関するブログ、「2ちゃんねる」の掲示板等で、失敗した人のパターンを徹底的に頭に叩き込みました。
――失敗パターンに着目した理由は何でしょうか?
1990年代にバブル崩壊で日本の景気が悪化していくなかで小学生時代を過ごし、社会人になった直後にリーマンショックで世界の株式市場が崩れていく様子を見ました。そのため、株式市場において暴落は必ず訪れるものだというイメージがありました。その中でお金を増やすには、「退場しないこと」が前提になる。そのため、失敗パターンを先に学んでおこうと考えたのです。
――過去に資産が減った際には、どのように状況を乗り越えましたか?
上手くいっている人のやり方を取り入れてみましたが、自分の性格に合った手法でないと機能しないことがわかりました。そこで、自分の性格を顧みて、良い部分を伸ばし、悪い部分を補っていこうと決めました。良い部分としては、物事を客観的に見られることや、数字の計算が得意であることで、これは投資に役立っています。逆に悪い部分は、ネガティブに物事を捉えがちなこと。よって、長期保有は向いていません。落ち込んだ時には、自分の性格と向き合って、軌道修正することが大事ですね。
暴落時を想定し、自分の性格に合った投資戦略を考えることが重要
――これから投資を始めようと考えている方へのアドバイスをお願いします。
自分に合った投資スタイルを見つけることが大事です。積み立てで資産形成するのもよいですし、個別株投資にチャレンジするのもよいでしょう。ただし、個別株投資で10年、20年…と残っている個人投資家の中で「投資は簡単だ」と思っている人は一人もいないと思います。
簡単に儲かる手法もなければ、ずっと勝ち続けられる手法もない。一方で、正しいやり方をやり続ければ、うまくいく可能性はあるし、労働では稼げないようなお金を得られるチャンスもある。もちろん、投資で失敗する可能性もありますが…。株式市場に臨むにあたっては、正しい方法を勉強してから参入することをお勧めします。
ただ、正しい情報以外に、「簡単に儲かる」といったような誘惑も潜んでいるので注意が必要です。意外と最初は警戒感があるので大丈夫だったりします。そういう手口に引っかかってしまうのはむしろ、少し投資に慣れてきた中で大きな損を出したり、投資が上手くいかず焦っている時期、あるいはプライベートで悩みがある時だと思います。そういったメンタルが弱っている時に、目の前に儲かりそうな話が転がっていると、ついそちらにすがりたくなってしまうもの。投資を継続していく上では、冷静に物事を判断できる状態をできるだけ保つことが大事です。
投資において客観的に自分自身や相場を見ることができる人は投資で成功しやすいのではないでしょうか。客観的に見ることができない人は、客観的に見るトレーニングをするか、インデックス投資を行ったほうがよいと思います。
歴史を振り返ると、株式市場で暴落は何度も起こっています。資産が大きく減って最もストレスが溜まる時に、自分自身がどのような投資行動を取るかを把握した上で、最適な投資戦略を考えるのがよいと思います。
暴落時の個人投資家の行動は、「怖くなって売却する」「安くなったから買いたくなる」という2つのパターンに大きく分かれます。前者は、下がり始めたと感じたらなるべく早く売却して、上がり始めたら再びエントリーする戦略をとるとよいでしょう。後者は、フルポジション(現金をほぼすべて株式に投資している状態)になってしまうタイプなので、なるべく安い株価の時に買えるよう、タイミングを重視した戦略をとるとよいでしょう。ご自身の性格に合わせ、暴落時を想定した投資戦略を考えることが大切だと思います。
――本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
>> >>5年で資産1億円達成!トレンドの波に乗る「成長株投資」手法 個人投資家kenmoさん【前編】
※本インタビューは2023年12月7日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。