メキシコペソ/円=空前の「上がり過ぎ」は修正に向かうか
メキシコペソ/円は、2020年3月の「コロナ・ショック」後に4.2円まで下落したが、2023年にかけて3年以上も上昇トレンドが続き、9円に迫るまで上昇した。3年以上続く上昇トレンドの中で、メキシコペソ/円は倍以上となったわけだ(図表1参照)。
メキシコの政策金利は11%を上回っており、メキシコペソは代表的な高金利通貨でもある。高金利に加え、大幅上昇が3年以上も続くことから、個人投資家の間でも人気通貨の1つとなってきたようだ。では、高金利通貨であるメキシコペソの上昇トレンドは2024年も続くだろうか。
3年以上続く上昇トレンドの中で、メキシコペソが大きく下落したのは2022年10月から12月にかけての局面だった。メキシコペソ/円は7.6円近い水準から6.5円台まで、最大下落率は15%近くに達した。これは、米ドル/円が151円台で上昇が一段落し、130円割れへ急落した局面での出来事だった。
以上のことからも分かるように、記録的なメキシコペソ/円の上昇相場は、歴史的円安の影響が大きく、このため米ドル/円が大きく円高に振れる局面ではメキシコペソ/円にもその影響が波及し、急落リスクが高まる。
メキシコペソ/円の5年MA(移動平均線)かい離率は一時40%を大きく上回るまで拡大した(図表2参照)。これは、空前のメキシコペソ「上がり過ぎ」が続いている可能性を示すものだ。そして、それをもたらした最大の要因は歴史的円安だろう。
その意味では、2024年に米ドル安・円高へトレンド転換が起こるなら、メキシコペソ/円も「上がり過ぎ」の本格調整局面を迎える可能性が高いのではないか。2024年のメキシコペソ/円は6.5~9円で予想する。
南アフリカランド/円=記録的「上がり過ぎ」は修正へ
南アフリカランド/円の5年MAかい離率は2023年に一時プラス10%程度まで拡大した(図表3参照)。経験的には、南アランドも「上がり過ぎ」懸念は強いものの、すでに見てきたメキシコペソ/円ほど極端な「上がり過ぎ」ということではなさそうだ。
ただ、2022年に入るまでは、南アフリカランド/円はそもそも5年MAを大きく上回ることがない状況が長く続いていた(図表4参照)。その意味では、2022年以降、米ドル高・円安が150円まで達するという歴史的円安が繰り返される中で、南アフリカランド/円もそれまでより「上がり過ぎ」懸念が強くなったということはありそうだ。
「歴史的な円安」が、2024年は修正に向かう可能性が高いなら、南アフリカランド/円も「上がり過ぎ」の本格的な修正局面を迎えることになるのではないか。2024年の南アフリカランド/円は、7~8.4円で予想する。
トルコリラ/円=最大の焦点はインフレの鎮静化
トルコではエルドアン大統領の再選後、インフレ対策で中央銀行が金融引き締め策に転換した。これを受けて、政策金利は8.5%から11月には40%まで引き上げられた。ただ、CPI(消費者物価指数)は前年比で60%以上も上昇するなど、強烈なインフレに鎮静化の兆しは未だ確認されていない。こうした中で、トルコリラ/円も下落トレンドに歯止めがかからない状況が続いた。
2020年から2021年にかけて、トルコの中央銀行がインフレ対策で利上げを続けた中で、トルコリラ/円も反発、52週MA程度まで上昇したことがあった(図表5参照)。経験的には、相場が底を打ち、上昇トレンドに転換した場合は52週MAを大きく上回る動きになる。
常識的なインフレ対策の利上げを継続し、インフレが鎮静化に向かうかが、2014年からのトルコリラ/円の長期下落トレンドに歯止めがかかるかの目安だろう。そして、足元で6.2円程度の52週MAを大きく上回る動きに向かうのかが、トルコリラ下落トレンド転換のもう1つの目安だ。そうしたインフレ鎮静化がなお微妙な中では、2024年のトルコリラ/円は4~6円で予想したい。