モトリーフール米国本社、2023年11月26日 投稿記事より

主なポイント

・米証券取引委員会(SEC)提出書類によると、ジェフ・ベゾス氏は11月にアマゾン・ドットコム[AMZN]の株式167万株を売却
・アマゾン・ドットコムの創業者である同氏には、保有株を売却するいくつかの理由がある
・一方で、個人投資家にとってはアマゾン株を購入するいくつかの理由がある

アマゾン・ドットコムの創業者が最大10億ドル相当の保有株売却を計画

米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、ジェフ・ベゾス氏は、30年近く前に自身が立ち上げたアマゾン・ドットコム[AMZN]の株式を11月上旬、167万株を売却しました。さらに、追加売却を検討しているとの報道もあります。

大株主が株式をこれほど大量に売却すると、株価に大きな影響を与える可能性があります。売り手が保有株を清算しようとすると、強い売り圧力が株価を押し下げるのです。投資家は、ベゾス氏の動きに慎重になったほうがよいのでしょうか、それとも株価の押し目を買いの好機と捉えるのがよいのでしょうか。

ベゾス氏は株式を売却したのか?

ベゾス氏が株式売却を報告したSECの書類には、投資家が見過ごせない重要な詳細が含まれています。ベゾス氏は株式を寄付しているのです。11月15日と16日に行われた2件の取引には取引コードGが記されています。これは、非営利団体への寄付を意味します。売却額はゼロとされており、ベゾス氏が実際に株式を売却したのではなく、株式を直接寄付したことを示しています。寄付を受けた非営利団体がその株式をどうするかは、ベゾス氏には関係ありません。

これは、株式投資家にとって効果的な税金対策です。非営利団体に株式を寄付すると、2つの税制上のメリットがあります。第1に、寄付した株式の価値を、慈善寄付として税金から控除できます。第2に、もし株式を売却していたら得ていたはずの投資利益に対するキャピタルゲイン税の支払いを避けることができます。

ベゾス氏は、自身の財産のほとんどを寄付する意向を表明しています。2020年には、気候変動対策と自然保護に取り組むための「ベゾス・アース・ファンド」を立ち上げました。しかし、同氏はまだ、ビル・ゲイツ氏やウォーレン・バフェット氏が立ち上げ、億万長者が財産の大半を寄付することを約束する「ギビング・プレッジ」に署名していません。11月の保有株売却は、ベゾス氏が自身の慈善寄付活動に資金を提供するための単なる税金対策と思われます。

とはいえ、ベゾス氏が保有株を手放す理由は他にもあります。自身の宇宙開発企業ブルー・オリジンの資金調達のために、アマゾン株を手放しているのです。同氏は以前、アマゾン株を毎年10億ドル売却してブルー・オリジンの資金にする予定であると語りました。負債を利用したり、株式を発行して投資家から資金を集めたりすることもできますが、保有株を売却して資金調達することで、ベゾス氏はブルー・オリジンに対する完全な支配権を握ることができます。

ブルー・オリジンは現在、別の宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの買収に向けて入札中です。この買収には数十億ドルの費用がかかる可能性があり、ベゾス氏はおそらく、保有するアマゾン株を使って買収資金を賄うとみられます。

今回の株式寄付で、ベゾス氏が保有するアマゾン株は9億8,825万株となりましたが、保有株がすぐになくなる心配はありません。全体として、今回の寄付は同氏の持ち分の0.2%にもならず、同氏は依然としてアマゾン株の約10%を保有しています。

アマゾン・ドットコムの株を検討する好機なのか

ベゾス氏による売却の報道を受けてアマゾン・ドットコムの株価が下落すれば、投資家にとっては買いの好機かもしれません。最近のアマゾン・ドットコムには多くの好材料があり、それらすべては、同社が2024年に多額のフリーキャッシュフローを生み出す見通しであることを裏付けています。

例えば、アマゾン・ドットコムでは、物流ネットワークの最適化と全社的な効率化により営業利益率が改善しています。さらに、同社はここ数年にわたり、データセンター、倉庫、配送センターへ巨額な投資をしてきましたが、今では設備投資は削減傾向にあります。

クラウドコンピューティング部門が再び成長を加速させ、広告事業が業界を上回るペースで成長し続け、eコマース部門ではサードパーティ・セラーサービスを通じて営業レバレッジを維持していることから、今後数年間は収益性が改善し続けると予想されます。

数年にわたる投資サイクルを経て、アマゾン・ドットコムの利益は過去最高を更新する見通しがあり、そして株価にはまだ上昇余地があるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Adam Levyは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。