◆クリスマスも過ぎた今日は12月の26日。ひと昔前は、女性の年齢をクリスマスケーキに喩えるジョークが流行ったものだ。24歳=売り時のピーク、25歳=まだ売れる、26歳=売れ残りで、値引き・安売り・たたき売り、といった具合だ。今なら到底考えられない話である。第一に女性に対して失礼千万である。第二に実態から離れすぎていて面白味がない。26歳が売れ残りのクリスマスケーキなんて言っても、可愛いものだ。なにしろ今や女性の平均初婚年齢は29.3歳。もう少し晩婚化が進めば、クリスマスケーキどころか、大晦日のおせち売り場である。

◆女性が第1子を産む年齢も30歳を超えた。この晩婚化、晩産化は由々しき事態である。少子高齢化が進めば、年金等の社会保障制度が立ち行かなくなる。政府は50年後も1億人程度の人口を維持する目標を掲げているが、そのためには出生率を2.07まで回復する必要がある。晩婚化、晩産化の実態を直視すれば、それがいかに非現実的で遠い目標かということがわかろう。

◆2.07というキーナンバーがもうひとつある。今年の春季労使交渉で、定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率は2.07%と、1999年以来15年ぶりに高い水準になった。小数点第二位まで一致しているので、偶然の符合にしては出来過ぎと思えるほどだ。15年ぶりの高い伸びとは言え、消費増税分も含めた物価は3%上がっているので賃金が2%上がっても、賃金上昇率が物価上昇率に追い付かず、実質所得の伸びはマイナスである。これでは消費が振るわないのも無理はない。

◆だが来年4月以降は消費増税の影響が剥落する。足元の物価も原油安で押し下げられている。このまま賃金上昇ペースが維持されれば実質所得の伸びはプラスに転じるだろう。そうなれば世の男性諸君もデート代におカネを使うようになる。恋が進展し、めでたくゴールインというカップルも増えるだろう。

◆なによりもデフレマインドの転換が重要である。デフレが長く続いたため、すべてのものが「少し待てば値段が下がる」と刷り込まれている。当たり前だが女性はモノではない。デフレだろうとインフレだろうと時間の経過で値が下がるなんてことはあり得ない。

◆えっ?「大晦日のおせち売り場」なんてひどいこと言っておいて、いまさらフェミニスト面するなって?「大晦日のおせち売り場」は別に暴言ではない。大晦日より、もうそれ以上先はない。つまり女性は31歳より上は歳をとらないと申し上げているのですよ(汗)。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆