ESG投資について様々な意見があります。企業年金連合会の調査では7割弱が中長期的なリターン向上が期待できると回答しており、大統領選を控える米国ではESG投資への反発が政治的な問題ともなっておりますが、モーニングスター社の最新のグローバル調査によると資産運用会社の67%がESGの重要性が高まったと回答し、特に環境への注目が高いようです。

一方理論研究の見解では高ESG企業の期待リターンは低いと言われます。高ESG企業は要求するリスクプレミアムが低くなるので現在の値段が高く設定され、期待リターンは低くなるためです。グリーニアムと呼ばれますが、リターンがリスクを取った結果とすれば、高品質企業はリスクが低い裏返しにリターンが低くなるということでしょう。それでも選好されるのは非金銭的な効用最大化という解釈になります。

リターンに限れば石油等資源価格が上がる際にはESGパフォーマンスは劣後しがちなので、折に触れてその妥当性が問われる局面は訪れるでしょう。

最近GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がデータサイエンスを駆使してベンチマークに勝てると見込むファンド選定を実施していますが、その中にESG戦略を採用するアクティブファンドが含まれました。伝統資産と比べデータ不足の面はあるものの、否定的な理論研究が多いなかで、膨大なシミュレーションを経て選定されたことは大変興味深いです。

岸田首相はESGを考慮した投資を促す国連の責任投資原則に公的年金7基金が署名する方向で調整を進めると先日明らかにしたように、年金運用にESG投資の動きが出ておりますが、定量分析としても評価されたことにとても注目しています。