◆27年前の今日、東京株式市場は未曽有の大暴落に見舞われた。1987年10月に起きたブラックマンデーである。日経平均の下げ幅は3,800円を超え、率にして約15%の大幅安となった。これは一日の下げ幅、下落率として最大であり、リーマンショックや東日本大震災後の急落を経験した今も塗り替えられていない歴代1位の記録である。

◆終日、値がつかない株価ボードをただ茫然と眺めていたのを思い出す。僕が証券会社の新入社員として、研修を終え支店に配属されて間もないときだった。証券マンとしてスタートから出鼻を挫かれた気がした。ああ、自分はなんてツイてないのだろう、こんな暴落にあったら怖くて誰も株なんか取引してもらえないよ、とわが身の不幸を嘆いたりもしたものだ。

◆それを「考え足らず」というのだろう。よく考えれば自分にとってチャンス以外のなにものでもなかった。新人の自分はこれから顧客開拓をするところ。既存客がいないのだから、自分のお客が傷ついているわけではない。そして相場が一回、大きな調整を入れたところからスタートできるのだ。新規に株の営業を始めるには絶好の環境だったのだ。

◆それでもブラックマンデーの記憶が脳裏をよぎると、いまだに一抹の気味悪さを感じてしまう。僕より上の世代の市場関係者はみな同じ気持ちだろう。そして今日、今年の10月20日は月曜日、まさにブラックマンデーの再来? ちょっと待った。ブラックマンデーは米国の株式市場が震源地。米国の10月19日月曜日、ニューヨーク株式市場の暴落をブラックマンデーという。東京市場、明けて翌20日は火曜日だ。株の上げ下げに日付や曜日は関係がない。ちなみに、ブラックマンデーの翌年1988年以降の26年間、10月20日の日経平均の騰落を調べると20勝6敗(当日休場の年は直前営業日)。実に8割近い確率で上昇している。さて、27年目の今日は?

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆