◆昨日の小欄で、「米国ではMBAを卒業した優秀な若者の多くがウォール街を目指す。米国では金融業はなお魅力的な産業のひとつであり続けているからだ」と書いたが、最近はそうではないらしい。ブルームバーグ・ニュースは、「ハーバード・ビジネス・スクールでは2013年の経営学修士(MBA)取得者のうち、金融業界に向かった割合は5%と06年の12%から減った。ペンシルベニア大学のウォートン校では26%から13.3%に低下した」と報じている。記事は、金融業界は超優秀な学部および大学院卒業生らに対して輝きの一部を失っているかもしれないと述べている。

◆自分が書いたことと正反対の事実がその日のニュースで流されては、さすがの僕も訂正を入れざるを得ない。「米国の環境がノーベル物理学者を生んだ」と述べたところ、「中村教授の受賞は、日本での業績に対するものである」とのご批判を賜ったが、訂正もお詫びもせずに通してきたのだが。

◆さて、小欄も今日で101回目を数える。101回で思い出すのは『101回目のプロポーズ』。浅野温子、武田鉄矢主演で大ヒットしたテレビドラマである。「僕は死にましぇーん」という名(?)台詞が有名である。問題はこのドラマのタイトルだ。101回目というのは数が合わない。武田鉄矢演じる冴えない中年サラリーマンはそれまで99人の女性と見合いをして99回断られてきた。100回目の浅野温子にも一度は断られる。でも最後は浅野温子とめでたく結ばれるのだから101回目ではないのでは?

◆まあ、どうでもいいくだらないことである。そんな重箱の隅をつつくようなことを言っても始まらない。では、この世界株安の理由を詮索するのは意味のあることだろうか?一昨日のストラテジーレポートで、このところの株式市場の変調は解せない、明確な理由がないからだと述べた。そのうえで、「尤も、さしたる理由などなくても、株価というものは上がったり下がったりするものである」とも書いた。まあ、ここも訂正すれば - 今日は訂正ばかりだが - 「さしたる理由もなく」というよりは、「主たる理由が特定できず」と言ったほうが正確だろう。松本大も「何か一つが原因ではなく、エボラ問題も含めた様々なリスク要因に対する不安が共鳴し、増幅し、或る時急にコントロール不能になり、溢れてしまった」のではないか、と述べている。(10月16日付 松本大のつぶやき)

◆ひとは兎角、ものごとに理屈をつけたがる。それは、そのほうが安心だからだ。しかし世の中は、理屈なんかで説明がつかないことのほうが圧倒的に多い。ひとの気持ちからしてそうだろう。自分の気持ちすら、自分で理屈がつけられないことがある。相場はひとが動かす。ひとの心理の総和である。理屈で説明しろというほうが無理である。

◆ストンとハッピーエンドで終わるのはテレビドラマのなかだけだ。それですら、細かいことを言えば、「そんな理屈はないんじゃない?」と言いたくなるような突っ込みどころが満載だったりする。当欄「新潮流」も縁起が悪いから、という理由で第42回を飛ばしているから、本当は今日で100回目。なんとも理屈が合わないがご容赦願いたい。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆