モトリーフール米国本社、2023年9月3日 投稿記事より

主なポイント

・アーク・インベストメントのポートフォリオのうち、ユーアイパスとズーム・ビデオ・コミュニケーションズは各々10%超を占める
・ユーアイパスはRPAソフトウェアの市場リーダーであり、AIを活用して自動化プラットフォームを強化している
・ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが提供する新たなAIソフトウェアは、同社が成長の勢いを取り戻すのに寄与する可能性がある

アーク・インベストメントはエヌビディア[NVDA]のポジションを縮小、ポートフォリオの各々10%超を占めるAI2銘柄とは

人工知能(AI)に対する熱狂の高まりを受け、エヌビディア[NVDA]の株価は年初来で3倍以上に上昇しています。エヌビディア製チップがアクセラレーテッド・コンピューティングの絶対的基準であることから、多くの投資家は同社を代表的AI銘柄とみており、アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)のキャシー・ウッドCEOもエヌビディアについて強気姿勢を取っています。

ところが、アーク社はエヌビディアの驚異的な年初来パフォーマンスを受けてポートフォリオのリバランスを行い、8月に同社のポジションを縮小しました。エヌビディアは依然としてアーク社のポートフォリオの約1%を占めていますが、それよりも、アーク社はユーアイパス[PATH]とズーム・ビデオ・コミュニケーションズ[ZM]という別の2つのAI関連グロース銘柄にポートフォリオの10%超を投資しています。

これら2銘柄について詳しく見てみましょう。

ユーアイパス[PATH]:ビジネス・オートメーション・ソフトウェア

厳しい経済情勢が顧客の支出を圧迫する中、ユーアイパスの2024年1月期第1四半期(2-4月期)決算はまずまずの結果となりました。売上高は前年同期比18%増の2億9000万ドルで、前年同期の32%増と比べて伸び率が大幅に減速しました。一方で、調整後の1株当たり純利益(EPS)は希薄化後で0.11ドルとなり、コスト管理が進展した結果、前年同期の0.03ドルの赤字から改善しました。

ユーアイパスは、ビジネス・オートメーション・ソフトウェアに特化した企業です。プロセスマイニングやタスクマイニングのツールを駆使して自動化の機会を特定し、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)やAIツールで、その機会に対処します。

具体的には、RPAはデータベースのアップデートやファイルの移動といった単純な自動化をサポートし、AIは文書データの抽出や意思決定を必要とするワークフローといった、複雑な自動化をサポートします。

ユーアイパスはRPA、インテリジェントドキュメント処理、プロセスマイニング、タスクマイニングの市場リーダーとして認められていますが、AIへの継続的な投資で優位性が一段と高まっています。

例えば、同社は最近、AIを活用してコミュニケーションについて分析、理解、行動する、コミュニケーションマイニング製品を発表しました。さらに、同社のパイプライン上には、エキサイティングなイノベーションが並んでいます。その1つであるクリップボードAIは、コンピュータービジョンと生成AIを使って、文書、スプレッドシート、アプリケーション間でデータを賢くコピー&ペーストする製品です。

この点に関して、ユーアイパスは最大市場規模を610億ドルと見積もっていますが、経営陣は、将来のイノベーションによって最大市場規模が930億ドルに拡大する可能性があるとしています。これは、成長が長く続くことを意味し、RPAや周辺市場で強力な足場を持つ同社は、その機会を活用できる絶好の位置に付けています。株価売上高倍率(PSR)は7.8倍であり、過去2年平均の13.2倍と比べて割安であることから、投資する価値は十分にあるかもしれません。

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ[ZM]:ビジネス・コミュニケーション・ソフトウェア

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの2024年1月期第2四半期(5―7月期)決算は予想を上回りましたが、売上高の伸びは依然として低調です。売上高は前年同期比4%増の11億ドルにとどまり、企業顧客数の伸びと、顧客1社当たり支出は引き続き落ち込んでいます。それでも、コスト管理によりフリーキャッシュフローは26%増の2億8940万ドルとなり、利益は好調です。経営陣は通期見通しを上方修正したとはいえ、今年度の通期売上高はわずか2%増にとどまる見通しです。

同社への投資テーマの中心にあるのは、ユニファイド・コミュニケーション・プラットフォームに対する長期的な追い風と、AIソフトウェアに対する需要の高まりです。Zoomミーティングは市場で最も広く使われているビデオ会議ソリューションの1つで、同社はこの人気を足掛かりに、電話(Zoomフォン)やカスタマーサービス(Zoomコンタクトセンター)といった他のコミュニケーションツールの利用促進につなげています。

実際、コンサルティング会社のガートナー[IT]は3年前から、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズを「サービスとしてのユニファイド・コミュニケーション(UCaaS)」のリーダーとして認めています。

一方で、同社はAI開発に多額の資金を投資しており、そうした取り組みは既にいくつかの魅力的な商品を生み出しています。例えば、Zoom IQは、メールの下書き、長い会議の要約、販売予測についての洞察などを幅広くサポートします。

また、Zoomバーチャル・エージェントは、カスタマーサポートのワークフローを自動化するサービスアシスタントを提供します。会社側は、2026年に予想される市場機会1250億ドルのうち、これらのAI関連分野が約200億ドルを占め、残りはビデオ会議、電話、コンタクトセンター関連のソリューションになると予想しています。

現在のガイダンスはさておき、経済が活況になり、企業支出が回復すれば、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの売上高の伸びは再び加速する可能性があります。UCaaSプラットフォームは、自社のデータセンターでコミュニケーションインフラを維持するコストや煩雑さの削減につながるため、従来の社内システムより効率的です。

アナリストは、これがズーム・ビデオ・コミュニケーションズのような企業にとって力強い追い風となり、UCaaS市場は2030年にかけて年率21%成長すると予想しています。

UCaaSにおけるブランド力と、急成長中のAIソフトウェアポートフォリオを考えると、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズはそうした追い風の恩恵を受ける好ポジションに付けています。足元のPSRは4.7倍と、過去3年平均の23.6倍と比べて大幅に割安であり、検討する価値はあるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Trevor Jennewineは、エヌビディア、ユーアイパスの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はガートナー、エヌビディア、ユーアイパス、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの株式を推奨しています。