モトリーフール米国本社、2023年8月8日 投稿記事より
主なポイント
・景気後退懸念が根強い中、市場は反発している
・著名な経済学者であるジェレミー・シーゲル氏は、経済情勢が変化し、景気後退入りの可能性は低いとみている
・シーゲル氏は、AI関連銘柄の中には「やや割高」なものもあるが、AIが牽引して市場が最高値を更新するとみている
人工知能(AI)が2023年の株式市場を押し上げているが、今後もさらなる上昇が見込まれる
2022年に過去10年以上で最悪のパフォーマンスを記録した株式市場ですが、2023年に入って急速に回復しています。主要株価指数はいずれも直近の安値から20%を超える上昇を示し、市場が強気相場入りしたとの見方もあります(強気相場入りの基準については異論もあります)。
しかし、長引くインフレ不安、蔓延するインフレを抑制するための米連邦準備制度理事会(FRB)による容赦ない利上げ、そして景気後退入りするかもしれないという懸念から、一部の投資家は急伸する市場を前に様子を伺っています。
ウォール街の中には、2023年中に景気後退入りするとの見方もいまだにありますが、ある著名な経済学者は、金融情勢が変化し、FRBの利上げキャンペーンはほぼ終了し、景気後退懸念は大げさだと指摘しています。
ジェレミー・シーゲル氏とは
ジェレミー・シーゲル氏は、金融界では伝説的な存在です。ペンシルベニア大学大学院ウォートン・スクールの同氏の経歴には「経済と金融市場に関する世界的な専門家」と書かれており、「ウォートンの魔法使い」という異名もあります。
同氏の著書『Stocks for the Long Run(邦題「株式投資:長期投資で成功するための完全ガイド」)』は、ワシントン・ポスト紙で歴代投資関連書籍のベスト10として取り上げられ、受賞歴もある名著です。シーゲル氏はマサチューセッツ工科大学で経済学の博士号を取得し、ビジネスウィーク誌から最も優秀なビジネススクール教授に選ばれ、「研究、執筆、教育で数十件もの賞」を受賞しています。
現在は、資産運用会社ウィズダムツリー・インベストメンツのシニア投資戦略アドバイザーを務め、CNN、NPR、CNBCといったメディアにもコメンテーターとしてたびたび出演しています。
そのため、シーゲル氏のコメントには誰もが注目しています。
好調な経済
シーゲル氏は経済に関する毎週の定例コメントの中で、株式市場は好調な経済に後押しされ、今後も力強いパフォーマンスが続くだろうとの見方を示しました。以前は、FRBが急速かつ大幅に利上げを行うことを懸念していましたが、現在は、「FRBによる引き締めは、私が以前に恐れていたほど過度ではない」と述べています。複数の地方銀行の破綻や、コモディティ価格の下落を不安視していたこともありましたが、最悪の時は過ぎ去ったようです。
シーゲル氏は、景気後退入りの可能性は低下しており、確率は約30%とみています。同氏はその裏付けとして、第2四半期の国内総生産(GDP)成長率が2.4%となり、大方の予想を大幅に上回ったことを挙げ、「これほど高くなると予想していたエコノミストは1人もいない」と述べました。同氏はまた、失業保険申請件数が6月に一時急増したものの、7月は低水準にとどまった点も挙げています。さらに、「消費者のセンチメントは依然として非常に強い」とも述べています。
同氏は、今後の利上げはデータに基づいて行うとするジェローム・パウエルFRB議長の最近の姿勢について、「市場にとって歓迎すべき展開である」と評価しています。
総合すると、シーゲル氏は7月31日付けの提出書類の中で次のように述べています。「このような経済的見方はどれも、株価や企業業績にとって好材料である。この強さは、市場にとって最大の懸念要素である景気後退の可能性を低下させるものである」。
2023年、株価を押し上げている共通のテーマ
2023年に株価を押し上げている共通テーマの1つが人工知能(AI)です。シーゲル氏は以前、一部のAI銘柄は「やや割高」だが、上昇はまだ終わっていない可能性があると指摘しました。同氏は、「勢いが、その企業の基本的価値よりもはるかに高く株価を押し上げることがあり、どこまで上昇するかは誰にも予測できない」と語り、AI革命は「まだバブルではない」と述べました。
シーゲル氏はハイテクバブルを例に挙げて説明しています。同氏は当時、「利益を上げていない企業に、とてつもないバリュエーションが付いている」と指摘していました。これとは対照的に、足元のAIの申し子であるエヌビディア[NVDA]について、シーゲル氏は「真の優良企業である」と評価しています。
エヌビディアは、AIブームから恩恵を受ける絶好の位置にいます。調査会社ニュー・ストリート・リサーチがまとめたデータによると、機械学習の用途で使用される画像処理装置(GPU)市場において、エヌビディアは推定95%のシェアを握っています。さらに、AIチップの需要が加速していることから、経営陣は2023年5-7月期の売上高を前年同期比64%増、前期比53%増と見込んでいます。
複数のリターン獲得方法
シーゲル氏はウィズダムツリー・インベストメンツのシニア投資戦略アドバイザーであるため、同氏のアドバイスを参考にしたい人は、まずはここから始めるのが良いかもしれません。Wisdom Tree U.S. Quality Growth Fund[QGRW]は年初来で約41%上昇しており(執筆時点)、同社が運用する上場投資信託(ETF)の中で最も高いパフォーマンスを上げています。
同ファンドの上位保有銘柄を見れば、好調の理由が分かります。アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、エヌビディアが上位を占め、保有比率はそれぞれおよそ12%、11%、6%、5%です。これらの企業はすべてAIと密接な関係があり、各社とも年初来で市場全体を大きくアウトパフォームしています。
シーゲル氏の言う通り、株式市場が2023年中に最高値を更新すると考えるのであれば、これらの銘柄に個別に投資する、あるいはWisdom Tree U.S. Quality Growth Fundを買うのも良いでしょう。もう少し分散したいなら、Vanguard S&P 500 ETF[VOO]やSPDR S&P 500 ETF Trust[SPY]など、S&P500指数に連動するETFに投資するという方法もあります。
いずれにせよ、シーゲル氏が正しければ、どの選択肢を選んでもリターンを得ることができるはずです。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Danny Venaは、アルファベット、アップル、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アップル、マイクロソフト、エヌビディアの株式、およびVanguard S&P 500 ETFのポジションを保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。