大きく動く、そして方向は予想比で決まる=CPI相場の2大特徴

CPI相場特徴その1=大きく動く

CPI発表を受けた米ドル/円の反応、いわゆる「CPI相場」の第1の特徴は、もちろん大きく動くということだった。特に、2022年7月から2023年1月にかけて、CPI発表当日の米ドル/円最大値幅は基本的に3円以上の大幅となった(図表参照)。

【図表】米CPI発表と米ドル/円の関係(2022年7月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
※注:黄色は結果が予想以上で米ドル高になったケース、青色は結果が予想以下で米ドル安になったケース

 
2022年7、10月のCPI発表当日の米ドル/円値幅は1円台にとどまっていたが、この時はその前後に発表されたPPI(生産者物価指数)の結果を受けて大きく動いていた。その意味では、CPI発表を受けたボラティリティ(値動き)がPPI発表後と分散されたということだったのではないか。

「CPI相場」のボラティリティ、つまり発表当日の米ドル/円最大値幅は、2023年2月以降は1円台に縮小した。ただし、7月CPI発表当日の米ドル/円最大値幅も2円以上の大幅となっており、一頃に比べると低下したものの、CPI発表を受けて米ドル/円はよく動くという状況はなお続いていると言えそうだ。

CPI相場特徴その2=方向を決めるのは予想比

そんなよく動いてきた「CPI相場」だったが、動く方向はCPIの前年同期比上昇率が予想より強いか弱いかが基本的な目安になってきた。なお2022年7月から2023年7月までに発表された13回のCPIのうち、予想より強い結果だったのは7回、一方予想より弱い結果だったのは4回、予想通りの結果だったのは2回だった。このうち、予想より強い結果だった7回のうち、6回はその日の米ドル/円は上昇し、逆に予想より弱い結果だったか4回は全て米ドル/円は下落した。

以上から分かるのは、「CPI相場」の方向を決めるのは、事前予想コンセンサスより結果が強いか弱いかということが基本だったということ。これは、CPI発表以上に長く相場を大きく動かすイベントとして知られてきた米雇用統計発表が、NFP(非農業部門雇用者数)が予想より強かったら米ドル買い、弱かったら米ドル売りといった初期反応になることとよく似ていると言えそうだ。

注目するべき予想比の強さ、動きの予想される今回

以上、「CPI相場」の特徴について見てきた。そんなCPI発表で少し気になるのは、今回の事前予想コンセンサスが、1年以上ぶりに前回の実績より強い数字となっている、つまり予想段階では久しぶりにこれまで続いてきたインフレ改善傾向が足踏みするとの見方になっている点だ。

久しぶりに、インフレ率の上昇(悪化)予想となっている米CPI。予想通りとなった場合はもちろん、予想以上にインフレ率上昇となった場合は、次回以降のFOMC(米連邦公開市場委員会)利上げ見通しにも大きく影響する可能性があるだけに、要注意と言えるのではないか。