2極化が進む国内の住宅価格

人口減少によって貸家の空室率が全国的に上昇する一方で、都心部の住宅価格の上昇が続いています。価格上昇は東京などの大都市だけの現象ではありません。

最近では、地方都市の駅近で利便性が高いマンションに人気が集まっており、北海道の旭川、群馬の高崎、福井県の福井などの駅前にもタワーマンションが建てられ、売れ行きは好調のようです。

利便性によって、国内の不動産価格には2極化が進んでいるのです。

東京都心の住宅価格が上昇する理由

国内不動産の中で、特に著しく価格上昇が進んでいるのが東京都心部です。

2023年前半に東京23区内で発売された新築分譲マンションの平均価格は約1億3000万円となり、1年前から6割上昇しました。

東京都心6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区)の中古マンションも、70平米で平均1億円を超える売出し価格となっています。

東京都心の不動産価格が上昇している要因の1つは、外国人投資家の資金流入です。

グローバル市場と比較した場合、相対的な価格の安さと投資対象としての安定性から東京が注目され、東京都心部がアジア圏不動産の中心としての立場を強めています。

円安によって日本の不動産の割安感は高まっている他、中国の不動産市況の価格低迷により、相対的に東京の地位が高まっています。

50年ローンが価格上昇に拍車の恐れ

さらに、ここにきて不動産の価格上昇に拍車をかける可能性があるのが、ネット銀行が取り扱いを始める最長50年の住宅ローンです。

従来の住宅ローンは35年が最長期間でしたが、15年延長されることにより、毎月の支払い負担を抑え、より多額のローンの借り入れが可能になりました。

ローン期間が35年を超えれば、金利を0.15%上乗せするようですが、それでもローン期間が長くなることで、同じ返済額でもより大きな金額を借りられるようになります。

例えば、毎月のローン支払い金額が15万円の場合、金利0.32%の35年ローンであれば、借り入れ金額は約6000万円となります。ところが、金利0.47%で50年ローンであれば、借り入れ金額は約8000万円まで増加します。

50年ローンの場合、元利均等返済の元本部分が少なく、ローン残債の減少が少なくなりますが、借り入れ可能額が約2000万円増えることになります。

東京都心部では、より高価格の不動産を購入しようとする動きに拍車がかかると思われます。

長期金利引き上げによる、不動産価格下落のリスク

東京都心部の不動産に関しては、引き続き需要が堅調で価格も上昇傾向にあります。また、インフレによって建築価格の上昇が進み、今後供給される住宅の価格も上昇していくことが予想されます。

その中で今後の不動産価格の不安材料となるのが、国内金利の上昇です。

日銀は、先月長期金利の上限レベルを柔軟に運用すると言う事実上の長期金利の引き上げを決定しました。

これを受けて、国内の長期金利はそれまでの上限金利の0.5%を超えて、ジリジリと上昇しています。長期金利の上昇によって、長期プライムレートが上昇すれば、長期金利連動の変動金利借り入れ金利が上昇し、マイホームの購入を躊躇する人が増える可能性があります。

大幅な金利上昇にならなければ、住宅価格への影響は軽微かもしれません。しかし、今まで金利上昇に関して、国内では楽観的な見方が支配的だった状況から考えれば、大きな変化と言えます。

今後の日銀の金融政策と市場金利の動向には、これまで以上に注意を払う必要があると言えます。

賃貸物件という選択肢

東京都心部では住宅価格が1億円を超えて、真面目に仕事をしているだけでは、もはや手が届かない水準になりつつあります。

パワーカップルと呼ばれる共働きの高所得者世代であれば、1億円近い住宅ローンを組むことも可能かもしれません。しかし、長期で高額の住宅ローンは将来の安定した収入を前提としたものであり、大きなリスクであることを忘れてはいけません。

マイホームに関しては、敢えて購入しないで賃貸するという発想もありだと思います。

私自身、以前はマイホームに住んでいましたが、今は賃貸住宅です。ライフスタイルに合わせて賃貸住宅を住み替える方法にもメリットがあり、どちらが良いか簡単には比較できません。

不動産はインフレに強い資産であることは確かです。しかし、資産として保有する方法には投資用不動産やREITといった選択肢もあります。住宅価格の上昇に翻弄され、慌てて購入しようとすることなく、冷静に行動するようにしたいものです。