7月の米ドル/円相場は145円から137円台まで7円近い急落となりました。この下落の背景にある材料は、2つあると考えられます。
7月日銀会合でのYCC修正・解除の思惑
8800億ドル(約122兆円)余りの資産を運用するインサイト・インベストメントがYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の解除を予想し、日本の10年債先物をショートしています。国債を空売りしているということですが、これによって日本の10年債の利回りは上昇します。
YCC政策により、日本の長期債利回りは0.5%が上限に釘打ちされていますが、ファンドの仕掛けによって世界の長期債利回りが低下傾向にある中、日本の長期金利だけ上昇圧力が強く、0.5%に限りなく接近しています。日本の金利が上昇していることもあり、円買いが大きく広がりました。
来週7月28日の日銀の金融政策決定会合が注目され、それまで円高が止まらない可能性もありました。しかし、7月18日、G20財務相中央銀行総裁会議後の記者会見で、日銀の植田総裁は「基本的に、持続的・安定的な2%のインフレ達成というところにまだ距離がある、との認識がまだまだある」と言及しました。
「その認識のもとでは、金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、イールドカーブ・コントロール(YCC)のもとで、粘り強く、金融緩和を続けていくということをしてきた」と発言。この発言によって、YCC修正、解除の期待は急速に後退し、米ドル/円相場は足元で反発しています。
米CPIの急速鈍化
6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.0%に低下しました。コア指数でみると、まだ+4.8%と高いのですが、総合CPIだけを比較すると日本のインフレ率のほうが高くなっており、日米のインフレ率が逆転しました。
7月21日に日本の消費者物価指数が発表されましたが、総合CPIは+3.3%、米国との比較で0.3%上回っています。3%台に低下することは予想されていましたが、予想を下回る結果となったことでマーケットでは「ミニCPIショック」とも評される急激な米金利の低下、米ドル/円の下落を演出しました。
インフレ指標は日米では算出方法の違いがあり、必ずしも単純比較できるものではないものの、エコノミスト的な観点で見ると項目別に比較できる市場参加者は多くなく、ヘッドラインに驚いて米ドル売りが加速した側面が大きかったと見られます。
いずれにしても来週7月25、26日(現地時間)は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)です。現在0.25%の利上げがマーケットでは有力とされていますが、その後に注目したいところです。年内もう1度利上げの可能性はあるのでしょうか。それとも今回の利上げが最後となるのでしょうか。
7月27、28日は日銀の金融政策決定会合があります。YCC政策に注目が高まっていますが、何も変更がなければ修正解除にかけたファンドのポジションの巻き返しから、米ドル/円相場は大きく米ドル高/円安方向に動く可能性は否めません。来週の日米の金融政策会合には大注目です。