モトリーフール米国本社、2023年7月3日 投稿記事より

主なポイント

・アーク・インベストメント・マネジメントはモンテカルロ・シミュレーションを実行し、テスラ[TSLA]の2026年までのパフォーマンスを予測
・臆測の域を出ないものの、シミュレーション結果は、テスラが今後数年間で急成長を遂げる可能性を示唆している
・AIをベースとしたビジネスモデルの導入により、テスラの利益は一段と強化される見通し

テスラの大ファンの1人であるキャシー・ウッド氏は、テスラ株に大幅な上昇余地があると予想

電気自動車(EV)メーカーのテスラは最先端技術の最前線におり、キャシー・ウッド氏と同氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の投資哲学にぴったり合致しています。既存のビジネスモデルを破壊する革新的な企業に注目することで知られるアーク社は、テスラ株を大量に保有しており、同社ポートフォリオの中で最大の8%超を占めています。

テスラの長期的成功に対する確信は、EV業界における卓越性と人工知能(AI)への取り組みから生まれています。

しかし、ウッド氏はテスラ株がどこまで上昇すると考えているのでしょうか。その答えは、アーク社が2022年に実施したモンテカルロ・シミュレーションの結果にあります。

基本的背景

モンテカルロ・シミュレーションとは、多くの異なるインプット情報に基づいて複数のシミュレーションを実行することで、さまざまな結果を予測するために使用されるモデリング手法です。テスラの場合、アーク社は38項目のインプット情報に基づいて100万回のシミュレーションを実行し、2026年までの同社のパフォーマンスに関する包括的イメージを導き出しました。このシミュレーション手法により、テスラ株に対する強気シナリオ、弱気シナリオ、基本シナリオといった幅広いシナリオを分析することができます。

留意点として、このシミュレーションは、テスラが2022年8月に実施した1対3の株式分割の前に行われたもので、以下の内容は、テスラの株価とアーク社によるモンテカルロ・シミュレーションの結果を、株式分割を考慮して調整しています。

シミュレーション結果の内容

アーク社は、シミュレーションから、予想されるテスラの株価について3つの主要シナリオを導き出しました。強気シナリオは全体の75パーセンタイル(上から25%)に位置する結果であり、2026年の予想株価は1,900ドルです。弱気シナリオは全体の25パーセンタイル(下から25%)に位置し、2026年の予想株価は966ドルです。基本シナリオは全体の平均値であり、2026年の株価は1,533ドルを予想しています。これは、足元の株価約260ドルから500%以上の上昇であり、実現すれば時価総額は5兆ドル近くに達します。

すべてのシナリオで確認された重要なドライバーの1つが、テスラが開発中の自律走行型ロボタクシー事業です。サービスはまだ開始されていませんが、基本シナリオでは、この事業が企業価値の62%、売上高の34%、利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)の半分超に貢献すると予想されています。

シミュレーションによると、ロボタクシーの開発成功とサービス開始は、テスラの収益性と成長スピードにとって極めて重要です。サービスの開始時期は今後5年間の同社の成功を大きく左右するとみられ、商業化のタイミングが早いほど、より良い結果につながると思われます。シミュレーション結果は、ロボタクシー・サービスの商業化が2024年か2025年に実現する可能性が高いことを示唆しています。

自律走行型ロボタクシー事業には大きな可能性がありますが、シミュレーションではEV生産が今後もテスラの成功の重要な原動力であることに変わりはないと予測しています。近年は黒字が続いていることもあり、EVを大量生産する上で資金繰りがもはや問題になることはないとみられます。

強気シナリオでは、世界全体の販売台数は2022年比で1,100%増の、1700万台が見込まれています。弱気シナリオでも、EV生産台数は2022年比で7倍超の1000万台に達すると予想されており、強気シナリオほどではありませんが十分に心強い結果となっています。

追加の利益ドライバーは含まれていない

シミュレーションには直接織り込まれていませんが、アーク社は、テスラのエネルギー貯蔵事業とAIへの取り組みに大きな可能性があることを認識しています。エネルギー貯蔵事業は、住宅用と商業用の再生可能エネルギー・ソリューションを通じて大きな価値を生み出す可能性があります。しかし、真の利益ドライバーはAIへの取り組みにあり、同社に大きな機会をもたらすとみられます。

アーク社は、テスラが最近発表した「サービスとしてのAI(AI-as-a-service)」は、同社のスーパーコンピューター「Dojo」によって企業が独自のAIモデルを訓練することを可能にし、2030年までに20兆ドルの価値を生み出す可能性があるとみています。さらに、人型ロボット「Optimus」プロジェクトも、反復作業や危険を伴う作業で人間に取って代わることによって、さまざまな業界に革命を起こす可能性を秘めています。

モンテカルロ・シミュレーションは臆測の域を出ず、明らかに限界があることに留意する必要があります。しかし、このシミュレーションは、テスラの成長の可能性について有益な洞察を与えてくれます。AIの進歩と、テスラがEVメーカーとして唯一利益を生み出していることを考えると、同社には大きな成長余地があります。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者RJ Fultonは、テスラの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はテスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。