絡まる株価下落の要因、中国の景気回復も想定より緩慢

2023年5月の中国株は軟調な動きとなっています。2023年4月28日終値~6月2日までの騰落率は、上海総合指数が-2.8%、香港ハンセン指数が-4.7%となっています。

上海総合指数は50日移動平均線を株価が割り込み、横ばいの200日移動平均線まで下がったところで下げ止まった感じです。香港ハンセン指数は50日移動平均線も200日移動平均線も株価は割り込んで大きく下落しています。

ただ、6月に入ってから反発基調の芽が出ているところです。5月に株価が大きく下がった理由ですが、米中対立への懸念や習近平政権の強権姿勢から欧米のファンドが中国株の保有を減らしているのではないかとの見方や、G7サミットにおいて対中対策で一致したことが嫌気されたというものや、米国の債務上限問題が市場心理を冷やし、その懸念が中国の地方政府のデフォルト懸念や不動産株の資金繰り懸念に波及したといったことが考えられますが、特定することが難しいです。

また、中国の経済指標を見ると、景気回復は予想されていたものより緩慢なもので、中国主要企業の業績もV字回復をしているというほどではありません。時価総額が大きなテンセント(00700)とアリババ・グループ・ホールディング(09988)の2023年1-3月期決算も市場予想を超えたにも関わらず、株価は下げで反応しました。

ともあれ、前述したいくつかの要因を背景として、5月は中国株から資金が流出しています。同じアジアでもコーポレートガバナンス改革が進んで自社株買いや増配などを開始し始めた日本の大企業に中国株から流出した資金が流入している様子も覗えます。ウォーレン・バフェット氏が中国のBYDの売却を続ける一方、日本の5大商社に投資しているのがその代表例でしょう。

6月から中国株は反発なるか、世界の株価潮流にも変化

6月に入って香港ハンセン指数は大きく反発してきています。もちろん、ここまで大きく下がってきたことに対する自律反発と捉えることもできますが、世界的に株価の流れが少し変わっている中で、中国株もその影響を受けている可能性があります。

米国の債務上限問題が解決する方向に向かい始めたことと、米国の利上げ休止観測で、これまで買われてこなかった米国の小型株や日本の中小型株が買われており、同じ流れの中で中国株にも見直し買いが入っている印象です。

現在、時価総額の大きなAI関連やビッグテックが買われて株価指数を押し上げ、日本株が買われているのは、コロナ禍に世界中で行われた大規模量的金融緩和や財政投資拡大によって過剰流動性が発生し、現在は量的縮小(QT)をしているものの、全く回収しきれておらず、その余剰資金が少しでもチャンスがあればと、割安感や将来性などから米国の小型株や日本株などに入り込むことで株価が上がる、といった背景があるのだと思います。

このように考えていくと、現在のAI関連やビッグテック、日本株が買われているのが過剰流動性の影響であるとするなら、もしかするとこれまで買われてこなかった中小型株や中国株に見直しの買いが入るという流れが続く可能性があります。

ここまで中国株は売られてきただけに株価は割安です。特に大手ハイテク企業の決算は2022年に底を打った印象で2023年からは緩やかな回復基調が続いており、その中で株価が下がっているわけなので割安な株価水準となっています。

もちろん、中国経済の回復は前述の通り緩慢であり、ここから中国企業の業績が急激なV字回復を描くとは予想しにくいところです。おそらく、2025年ぐらいまでは緩やかな回復基調が続くのではないかと思われます。しかし、それを加味しても将来の成長期待と比較して、中国のIT企業の株価は割安と考えられ、株価が軟調な今はチャンスと捉えることもできると思います。