今回はベンチマークを上回る投資成果を目指すアクティブ運用とベンチマークに連動する投資成果を目指すパッシブ運用について話します。

4月にS&P社からSPIVA日本スコアカードと呼ばれるアクティブ運用投資信託のパフォーマンス測定結果が示されました。年2回公表されるデータですが、直近分は2022年末までの国内で取り扱われている株式ファンドについて日本から新興国まで、各アクティブファンドが対象ベンチマークに劣後(アンダーパフォーム)した割合を集計しています。

【アクティブファンドが参照指数にアンダーパフォームした割合】

  1年 3年 5年 10年
日本大型株 68% 77% 90% 82%
日本中小型株 75% 50% 47% 52%
全ての日本株 70% 71% 82% 73%
米国株 53% 90% 95% 91%
グローバル株 71% 82% 82% 95%
国際株 42% 87% 96% 96%
新興国株 80% 88% 91% 100%
(期間1年は2022年、3年は2022年末までの3年を示す。S&P社レポートから小数点以下四捨五入し筆者作成)

長期投資の観点から過去10年に着目すると、日本中小型株でアンダーパフォーマンスの割合が半分程度と相対的に低位ですが、総じてベンチマークに勝つのは難しいことが分かります。新興国株に至っては過去10年で100%が劣後しています。

投資信託協会によると信託報酬はアクティブファンド平均年1.14% vs インデックス0.38%です(2023年3月末)。コストの高さがある分アウトパフォームが難しくなる点はあるでしょう。また過去10年のアクティブファンドの生存率は全ての日本株ファンドで62%、米国株で56%、新興国株では30%と勝ち続けることの難しさが伺えます。

では長期資産形成にはパッシブファンドが有利なのでしょうか?まずこの集計に含まれるアクティブファンドは玉石混交です。パッシブ投資と大差無いながらアクティブを名乗りコストが高いファンドが含まれる可能性があります。

アクティブファンドとは付加価値を追求する投資哲学があり、時に投資銘柄への配分が集中するなど参照指数との構成比率が大いに異なる(べき)ものです。その哲学に共感できるかは大事な判断基準となりますし、手数料が高くてもその価値には注目です。また東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請する中で、変化する企業を捉えるポテンシャルはアクティブ運用に期待されるところです。

4月に金融庁から出された資産運用業高度化プログレスレポート2023によると、機関投資家は市場連動のパッシブ運用の組入割合が高いものの、アクティブ運用は調査活動によって中長期的に成長性の高い企業を発掘し、選別するという、重要な価格発見機能を担っている、とされました。日本株の成績は先ほどのデータでも相対的に良好な中でアクティブ運用の拡大余地は大きいです。

なお債券ファンドではアクティブ運用の勝率が株式の場合より高いとの分析があります。参照指数に非効率性があり、逆にアクティブ運用には収益機会となる場合や、参照指数は過度に銘柄の入れ替えが起きる、またアクティブ運用はデリバティブを活用してアルファが追求できるなどと言われています。

アクティブファンドは手数料面などで敬遠されがちですが、パッシブでは捕捉しきれない領域への運用手段として魅力的です。過去は将来を約束するものでは無いですが、先ほどの生存率の低さを見ても、ある程度これまでのパフォーマンスは参考に見るべきでしょう。投資哲学面で共感できるものや興味ある分野への投資を通じて、世界をより身近に感じられるのも魅力ではないでしょうか。

欧米で先行するアクティブ型のETFについて日本でも導入が議論されており、6月下旬にパッシブETFに限定する今の上場ルールの改正が見込まれています。こちらはETFなのでコスト面でより魅力的となるかもしれませんし、今後の展開が注目されます。