株と債券の相関が高まっています。両者は逆方向に動くことで分散効果が得られる、というのが長らく資産配分の基本とされてきました。一般に、経済が活況であれば株価は上昇しやすく、金利も上がりやすいため、債券価格は下落しやすくなります。

実際、2000年代からコロナ前にかけては、両者が異なる値動きを示す場面が多く、分散効果が働きやすい環境でした。しかし、こうした関係が常に続くわけではありません。1990年代にも株式と債券の相関が高まる局面はありましたし、近年も両者が同じ方向に動きやすくなっています。

その背景の一つにあるのがインフレです。インフレ局面では金利上昇が意識されやすく、債券には逆風となります。同時に、将来の利益成長への期待で評価されやすいグロース株は、金利低下の恩恵を受けやすい半面、金利上昇には弱い傾向があります。このため、金利低下局面では債券とともに買われやすく、逆にインフレ懸念から金利上昇が意識される局面では、債券安と株安が同時に起こりやすくなります。グロース株が主導する相場では、株と債券の相関が高まりやすい局面が生じやすいのはこのためです。

このような状況では、債券は完璧な分散先ではなくなっている面があります。だからといって、債券を減らし、より株式に近い値動きをする資産へ移ればよい、という発想には注意が必要です。相関がプラスになったとしても、それが一対一で同じ値動きを意味するわけではありません。景気後退や成長鈍化の局面では、なお債券の分散効果が機能することは十分に期待されます。そう考えれば、債券は依然としてポートフォリオの一部として有用な資産です。

そもそも、株と債券を組み合わせたポートフォリオにおいて、支配的なリスクは株式から来ています。この構図は、相関の符号が変わったからといって大きくは変わりません。重要なのは、株式集中リスクをどう分散するかという視点です。単に「債券が以前ほど効かないから別の資産へ」と考えるのではなく、その資産が本当に株式リスクを和らげるのかを見極める必要があります。

この点で気をつけたいのは、株式に対する感応度です。債券の株式感応度は相対的に低い一方で、他の資産クラスのなかには株式と近い値動きを示すものがあります。分散のつもりで組み入れた資産が、実は株式リスクを別の形で抱え込んでいるだけ、ということもあり得ます。株式と同じ方向に動きやすく、しかも株式以上に大きく変動する資産であれば、なおさら注意が必要です。

相関の変化だけに目を奪われるのではなく、ポートフォリオ全体としてどのリスクをどれだけ持っているのかを冷静に点検することが重要です。