モトリーフール米国本社、2023年5月16日 投稿記事より

主なポイント

・イーロン・マスク氏がツイッターCEOを退任し、後任はリンダ・ヤッカリーノ氏に
・これにより、マスク氏は現在進行中のプロジェクトに集中し、テスラブランドを守ることができる
・マスク氏がツイッターに関与して以来、テスラの株価は50%下落している

今回の決定は、テスラの成長にとって重要なタイミングで下された

億万長者のイーロン・マスク氏は5月12日、ツイッターを運営するXコーポレーションの新CEOとしてリンダ・ヤッカリーノ氏を迎え、自身は約6週間後に会長兼最高技術責任者(CTO)に就任するとツイートしました。

これは、マスク氏が2022年後半にツイッターを買収して以来、ツイッター、テスラ、スペースXのトップを兼任してきたことを考えると、テスラの株主にとって極めて大きな展開です。

テスラは現在、株価を長期的に押し上げる可能性のある複数の有力プロジェクトを進めており、今回の決定は、これ以上にないタイミングと言えます。マスク氏の決断によって予想される3つの影響、そしてテスラ株の投資家にとってどのような意味を持つのか、以下で説明しましょう。

1.重要な時期にマスク氏がテスラに集中

ここ数ヶ月のテスラは、マスク氏が全神経を集中させる必要がありませんでした。事業は利益を上げ、モデル3とモデルYは着実に増産し、生産台数は引き続き競合ブランドを圧倒しています。しかし、テスラは進化を一段と進め、いくつかの大型プロジェクトを市場に投入しようとしており、今後さらなる成長が見込まれます。

サイバートラック

まず、テスラはピックアップトラックセグメントへの参入を計画しており、2023年第3四半期にも「サイバートラック」の納車イベントが開かれる予定です。フォードのF-150シリーズは米国で最も売れているピックアップトラックで、既にEVモデルが発売されています。サイバートラックは、2019年の発表以来テスラが開発を続けており、大きな市場セグメントへの扉を開くものです。

テスラ・セミ

テスラは、2022年12月にセミトラックの「テスラ・セミ」の納車を開始し、最近は飲料大手ペプシコに新車両を納入しました。1台の価格は約25万ドルで、米国内には現在、400万台を超えるセミトラックが走っています。テスラはセミトラックのEVモデルを市場投入した数少ない企業の1社ですが、テスラ・セミの航続距離は推定500マイルであり、1回のフル充電で150~250マイルという市場平均と比べると突出した存在となっています。投資家は、テスラがどれだけ早く増産できるか、そしてテスラ・セミの航続距離によって、この新たな市場でどれだけ市場シェアを獲得できるかに注目しています。

完全自動運転

テスラは、積極的な値下げが話題となり、2023年第1四半期の利益率にも影響が及びました。マスク氏は、これは戦略的なものであり、将来的に完全自動運転(FSD)で利益率を取り戻せると強調しました。FSDは何年も前から開発が進められていますが、いまだ完成していません。しかし、技術は進歩し続けています。マスク氏は、FSDが同社にとって最も重要なベンチャー事業になり得ると、以前からほのめかしています。

2.テスラブランドの二極化が和らぐ

ソーシャルメディアプラットフォームのツイッターに関与してきたことで、マスク氏の知名度は大幅に上昇しました。マスク氏はツイッター上で最もフォローされている人物であり、1億4,000万人近いフォロワーがいます。ソーシャルメディアで注目されることにより、同氏は現在そして将来の顧客と直接交流しているのです。

マスク氏の知名度は、テスラが従来の広告やCMを使わずに成長するのに役立っており、同氏は今後も積極的にツイッター上での活動を続けると思われます。マスク氏は、ヤッカリーノ氏の経営が軌道に乗れば、自身はソフトウェアや製品の設計に集中する意向を示しています。マスク氏は、ここ数ヶ月と比べて物議を醸すことが減るかもしれず、動向が注目されます。

「評判を築くのには何年もかかるが、壊すのには数分しかかからない」という言葉があります。マスク氏の奇抜で、時に極端な性格が、テスラブランドに対するマイナス評価につながり得ることは否定できません。率直に物申すマスク氏の性格は称賛に値するかもしれませんが、消費者がマスク氏とテスラブランドを否定的に結び付けて考えた場合、テスラの事業機会が失われる可能性があります。

3.市場心理を後押しする可能性

株価の動きを見ると、ウォール街はマスク氏のツイッターへの関与を好ましく思っていないようです。マスク氏が2022年初めにツイッター株を買い始めて以降、テスラの株価は50%近く下落しています。幸いなことに、テスラは利益が成長しているため、株価収益率(PER)は当時の200倍に対して現在は50倍と、魅力は大幅に増しています。

投資家は現在のテスラについて、複数の有望プロジェクトが徐々に形を見せ始めており、それぞれが、既に成功しているテスラに大きな成長をもたらす可能性があるとみています。さらに良いことに、バリュエーションの観点から、以前よりも割安に投資することができるのです。

このような状況では、株価の軌道を変えるカタリストが必要になることがありますが、マスク氏のツイッターCEO退任が、そのカタリストになるかもしれません。マスク氏がサイバートラックの2023年中の発売に注力すれば、テスラは次の強気相場で大きな勝者となる可能性があります。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Justin Popeは、記載されているどの企業のポジションも保有していません。モトリーフール米国本社はテスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。