日経平均は遂にボックス圏を越え、52週高値を更新しました。金利上昇懸念の後退、活動水準の回復、インバウンドの増加、賃上げ浸透などがその原動力になっている模様です。

アノマリー的には「セル・イン・メイ(Sell in May)」というところなのでしょうが、2023年に限ってはこの経験則はどうも当て嵌まらない公算が増してきたと言えるでしょう。引き続き、相場動向には楽観的なスタンスで臨みたいと考えています。

とはいえ、欧米では金融不安がまだまだ燻っており、地政学的な何らかの「ショック」が発生するリスクはむしろ高まっているのも現実でしょう。上値を追うほどに楽観的になるのではなく、そろそろ慎重な視点を気にかけていく段階に入ってくるのでは、とも考えています。

日本でもカジノ法案可決、大阪府・市がIR認定へ

さて、今回は「カジノ」をテーマに採り上げてみましょう。2016年に統合型リゾート(IR)推進法、いわゆるカジノ法案が成立しました。それを受け、日本各地で経済活性化を期待し、IR誘致の可能性が検討されているのですが、法案では誘致は全国に3ヶ所までと制限されているため、どこが早く名乗りを挙げ、政府から認定を受けることができるのか、が大きな注目点となっています。

名乗りを挙げる以上は、運営のスキームやノウハウの取得、予算規模、収支見通しなども用意しておく必要があります。今のところ、誘致を検討している自治体はその細部を急ピッチで詰めているというところでしょう。

そのような中、2023年4月に大阪府・大阪市の計画が政府にいち早く正式認定されました。概要は東京ディズニーシーと同規模の敷地にカジノや国際会議場、ホテルを整備し、2029年開業を目指すというものです。運営事業者には米国でカジノ運営に実績のある米企業エムジーエム・リゾーツ・インターナショナル(MGM)を加え、総投資額は約1兆円、年商は5200億円という計画となっています。

株主投資の観点から探る、今後期待のカジノ関連銘柄

ただし、ちょっと意外だったのは、主たるターゲットがIRでなんとなくイメージされていたインバウンド需要ではなく、年商の7割を国内からの訪問客で見込んでいるということです。

海外からのインバウンドがターゲットであれば、カジノビジネスの大部分を支えるハイローラー(大金を賭けることのできる「上客」)の取り込みがカギになるのですが、国内客を主力と見立てる背景には、このIRも国内で既に存在しているテーマパークの一種というようなスタンスにあるのかもしれません。この試みが成功するのかどうか、これから様々な観測がなされるでしょうが、まずはこの見立てを前提に、株式投資の観点から注目企業を考えてみたいと思います。

当然ですが、IRビジネスにおける最大の受益者は運営会社になります。大阪の場合は、運営ノウハウを有する前述の米国企業も参加するジョイントベンチャーが運営することになるのでしょう。運営会社が利益を計上すれば、それは出資している企業群に何らかの形でリターンが計上されることになります。カジノ関連銘柄としては、まずはこの運営会社出資企業がこの対象に挙がることでしょう。

ちなみに、大阪の場合はエムジーエム・リゾーツ・インターナショナルとオリックス(8591)が筆頭株主で並び、残りを関西電力(9503)やパナソニック ホールディングス(6752)、NTT西日本(日本電信電話)(9432)、近鉄グループホールディングス(9041)などが出資する形態になるとしています。これは現時点での計画なので、実際には変更される可能性があることはご留意ください。

カジノ投資のメリットを享受するかもしれない業種とは

次に考えられるのは、投資に絡んだ受益者群です。大阪では1兆円強の投資が計画されていますが、ここからビジネスメリットを受ける企業も少なくないことは想像に難くありません。

参考までに、東京オリンピックの総投資額は1.7兆円とされています(日本の会計検査院によると、2.5兆円前後)。東京オリンピックの準備では建設会社が強烈な人出不足に直面したことをご記憶の方も多いのではないしょうか。それだけ実態経済への影響があったのです。

大阪のIR構想はその半分程度の投資規模が計画されていますが、それでも相応のインパクトがあると考えるべきでしょう。ホテルや施設などの建築物に加え、道路や橋の建設、鉄道新設の可能性、さらには水道や電気、通信といったインフラの構築も不可欠です。これらからは建設会社や交通機関、公益企業や情報通信システム会社などがそのメリットを享受することになるのではないかと予想します。

IRの運営スタイルにも注目。エンターテインメント企業にもビジネスチャンス

IRの運営にも注目です。通常、IRはカジノ、ホテル、飲食、エンターテインメントの4つのビジネスの混生で成立しているのですが、アジアのIRではこのうちカジノのウエイトがかなり高いのが特徴です。

一方、ラスベガスなどではよりバランスされた収益構造にあり、特にエンターテインメントの比重はカジノに迫るものと指摘されています。大阪モデルではアジア型のようにカジノで過半の収益を稼ぎ出す計画にありますが、運営するのはどちらかといえばラスベガス型IRに実績があるようなMGMです。海外のハイローラー期待がそれほどでもないことを考えれば、そのノウハウを活かし、徐々にエンターテインメントにも注力していく可能性は十分あるでしょう。

その場合、日本ならではのエンターテインメント企業もまたビジネスチャンスを得ることになるはずです。そう考えれば、IR関連銘柄はかなり幅広いことがわかります。こういった投資が日本経済の活性化に繋がってほしいところです。