平昌冬季オリンピックも終わり、全力を尽くすアスリートに感動した、にわか冬スポーツファンも多かったことでしょう。

さて、先週の新聞に「M字カーブほぼ解消」という記事があったのを覚えていらっしゃるでしょうか?そもそもM字カーブという言葉も、あまり馴染みのない方も多いかもしれませんね。
総務省の行う「労働力調査」で、15~64歳の労働可能人口のうち、実際に仕事をしている人の比率「労働力率」を年齢層に分けてグラフ化したとき、女性については25歳以降30代の出産・子育てによる離職率が高まり、子育てが一段落した40代以降に再び働き始めるケースが多いため、その線が「M字」に似た形を取ることから「M字カーブ」と呼ばれます。女性就業率の高い欧米では大きなM字のへこみもなく台形に近いことから、日本のお手本とされてきました。その女性の労働力率が全体としては米国、フランスを抜いたというのですから驚きです。

この見出しは、個人的にはかなり印象深いものでした。と言いますのも、大学の卒業論文のテーマが「女子労働」(経済学的な表現なので硬いものですが・・・)、女性がいかに仕事をして、社会で活躍できるか、についての研究はライフワークと思っていました。そういう意味では、目標達成に近づいて大喜びか、というと必ずしも理想的な内容とは言いきれません。

もちろん、保育所は整備されつつあり(まだまだ足りません)、男性の育休も制度としてはでき(まだ取得率はかなり低いです)、結婚や出産、育児をする女性に対しての周囲の態度もセクハラ、パワハラと厳しく注意されるようにはなってきて、社会の基盤として確実に女性も働き続けやすくなってきてはいます。

ただ以前は「働く意欲のある女性」に壁があることが問題でしたが、現在はそれ以上に結婚しても、出産しても「働かないと食べていけない」という切実な事情から働いている人が多いのが事実でしょう。
男女とも賃金上昇カーブが緩くなり、一つの世帯に働き手が二人以上いることは、将来に渡る収入減少リスクを減らし、老後資金を確保していくためにも最大の方法となっています。
また、晩婚化が進み、結婚しても再度「おひとり様」になることも珍しくなく、自身の生活のため仕事をせざるを得ない女性も多いです。
つまりM字曲線が台形に近づいたとしても、晩婚化少子化は加速していて、そうしたおひとり様の女性の労働条件(勤務時間や賃金)が大幅に改善されているのかというとそうではないことが問題です。キャリアプランを考える余裕もなく、生きるため、食べるためだけの労働は前向きなものとは言い難く、収入が安定・上昇しなければ、長期に渡るライフプランを想定するのも難しくなります。

社会が変わるのを待って不満を持つより、自身のライフプラン、マネープランを自分でコントロールできるように個々人が心掛け、早めに行動に移すようにしていきたいですね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員