今週も引き続き、仮想通貨についてです。
色々と不透明なことが多い仮想通貨の取引ですが、先週「経済原理を無視した投機」であると書いた、その理由について、もう少し詳しく書いてみたいと思います。
先週、米国の長期金利が上昇、株価が大きく下がりました。米国金利が上昇すると日本との金利差が広がり、その時点で米ドルが買われ、ドル/円が上昇しています。もちろん、それ以上に好調な雇用統計に反応したこともあるでしょう。
先週のちょっとした各相場の動きですが、これこそが経済の動きを反映したもの、それに市場参加者(ひと)の思惑が乗っての動きです。
各国中央銀行が注視、管理する金利の動き(金利相場)、各国(中央銀行)が発行している通貨の交換である為替相場、企業の業績、景気に影響される株式相場、これらの動きは互いに密接に関係し、世の中の経済の動きを表しているものです。
その国の信用があるから通貨を売買できるのです。政情不安のある国、通貨の交換を突如制限する可能性のある国、為替規制をする国などの通貨は自由に市場売買できません。
以前アフリカのジンバブエを訪れたとき、現地の人の買い物も全て、他国通貨である米ドル建てでした。ハイパーインフレーションにより自国通貨の紙幣は1億ジンバブエドル(Z$)も10億Z$もほぼ無価値。お土産として1米ドルと交換してくれないか、という売り子たちが存在していたほど。この国では2015年に自国通貨を破棄・廃止しました。通貨価値が国の信用と金利の影響によるという明らかな例です。
通貨はそれぞれの国の金利のもと、保有すれば金利を稼ぐ、借りれば金利を払うという仕組みになっています。FX投資をしている方は当然ご存知のことですが、各国とも超低金利が続いた故に金利差について鈍感になっている投資家も多いかもしれません。
「通貨」と名の付く仮想通貨をもう一度見直してみましょう。
中央銀行が発行していませんし、そうした裏付け(信用)は一切ありません。保有者同士による信用のみです。管理する中央銀行もありません。当然金利もありません。コモディティ投資において、金投資なども金利が付かない投資の代表ですが、金そのものの価値という裏付けはあることは大きな違いです。
当然、背後に国も政策も法律もありませんし、もちろん経済指標もなく、そもそも経済が存在しないところにあるものです。
取引所のリスク管理も補償ルールも曖昧です。
現時点で(将来性は別にして)、仮想通貨にお金を投入することは明らかに投機。大きなリスクを抱えることになるといえます。
先日テレビで若い女性が「夫がいつリストラに遭うかもしれないので、私もお金を稼ぐために仮想通貨取引しています」と語っていました。そのことで、家計により大きなリスクを抱えてしまっているのです!
投資と投機を明確に区別し、そのために勉強することは、自身のお金を守るためにも本当に大切なことなのです。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員