持ち家か、賃貸か、どちらにもメリット/デメリットがあります。その人のライフスタイルによるものが大きいですね。「専門家」なる人が「絶対にこちら!」と言いきるケースも多いですが、そのまま信じ込まずに自分自身の生活や考え方と照らし合わせ、別の考え方の「専門家」の意見も見ておくことを勧めます。
強引に自説を唱えているご本人は当然それが正しいと信じ込んでいますが、本当のところ、何が正しいのか、どちらが向いているのかは人それぞれ異なります。
お金の投資と同様、他人任せにせず、自分自身のことは自身で向き合い、考えることが第一歩です。

さて、そのようにして、例えば「持ち家」を選択したとしましょう。
以下のような不動産の広告を見聞きしたことはあると思います。 ・頭金ゼロ
・家賃並みに月々の支払い
・住宅ローン返済期間50年間

住宅を入手し易くなったり、月々の負担が減ったりと魅力的な部分があることは事実ですが、その部分だけ見て飛びつかずに冷静に考える必要があります。
例えば、素敵なモデルルームを見て、思わずその気になってしまい、説明を聞いているうちに購入できそうな気がしてきた、人気物件だから早く申し込まないと買えなくなると言われて即決断・・・という話はよく聞きます。預貯金(自己資金)がどれくらいあるか、自分の年収は今いくらか、だけから検討を始めてしまうことが多いようです。
物件ありきで辻褄合わせの資金計画を立ててしまうと後々にしわ寄せが来る可能性が大です。子どもはいるのか、増える予定はないのか、子どもの教育プランとその資金はどうするのか、自身の老後資金は将来的に確保できるのかを前提に、現在の預貯金から頭金に回せる金額、月々に住宅資金として使える金額、そのペースで支払える期間等々、事前に確認すべきことはたくさんあります。それらをライフプランシートに記入し、確認した上でいくらの物件が購入できるのかを初めて考えられるのです。

ちなみに個人的には少なくとも頭金は2割、その他にかかる諸費用等(新規の家具家電購入資金も含め)は現金で用意すべきと考えます。もちろん預貯金を使い切るようなことはしないでくださいね。万が一の資金は手元に残す必要があります。
返済期間についても、老後破綻が言われ、公的年金の受け取りに不安を持つ人が多い時代に80歳まで住宅ローンを組むことのリスクの大きさを認識すべきです。
月々の返済金額を減らす、(頭金ゼロにして)借入金額を増やす=返済期間を長くすることで、つまりは金利負担が増大します。途中で繰り上げ返済できそう、遺産や贈与を受け取る予定といった方以外は、厳しい状況を作り出すことになる可能性が高まります。こうしていくと自ずと購入可能金額が定まってきますよね。

ふらりとモデルルームを見に行く前に、最低限こうした「自分と家族の将来のこと」を把握しておくようにしましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員